古い家屋や築年数の経った戸建て(いわゆる「ボロ物件」)を所有していると、売却先が見つからず頭を悩ませることがあります。
特に人手をかけずに処分したい場合、どこから手をつければよいか分かりにくいものです。
本記事では、ボロ物件を手放す主な方法と、それぞれの手順・相談先をわかりやすく解説します。
例えば政府統計でも空き家の増加が問題視されています。最新の調査では日本全国の空き家数は約900万戸に上り、そのうち放置空き家※も増加傾向にあります。こうした背景から、放置による風化や事故のリスクを避け、早めに処分する必要性が高まっています。
以下では、ボロ物件処分の基本的な進め方と相談先のポイントを紹介します。
ボロ物件処分の仕方 – まず何から始める?
まず「ボロ物件」とは、経年劣化で大幅な修繕が必要な築古家屋や、事故物件・心理的瑕疵のある家などを指す言葉です。一般的な不動産業者はこうした物件を取り扱わないことが多いため、自力で売却活動をしても買い手がつかず手詰まりになりがちです。
放置しておくと固定資産税や維持管理費が長期的にかかり続けるだけでなく、老朽化による倒壊・水漏れ・家財崩落といった事故を招くリスクがあります。
実際、2023年の国勢調査では全国の空き家数が約900万戸に達し、管理不全空き家に対して市町村が指導・勧告できる対象も拡大されました。
管理が不十分な家屋には税制優遇が適用外となる場合もあるため、早期処分が求められています。
ボロ物件とは何か
ボロ物件は正式な法律用語ではありませんが、一般的に「築年数が非常に古い」「傷みが激しい」「崩壊寸前の状態」といった特徴をもつ不動産を指します。
たとえば築50年前後で大規模なリフォームが必要な空き家や、雨漏り・傾きがある建物、あるいは前の所有者のトラブル(事故や汚損など)により敬遠される物件です。
通常の仲介売却では門前払いされることが多く、個人で解決しようとすると手間と時間がかかってしまいます。
ボロ物件を放置するリスク
ボロ物件を放置すると、固定資産税・都市計画税、火災保険料、水道・電気代などの維持費用が毎年負担となります。特に放置年数が長引くほど税評価額が上がることもあり、税金負担が大きくなります。
さらに近隣への倒壊被害や家財の散乱による火災リスク、器物損壊・不法侵入といったトラブルも増加します。
2023年には空き家対策特別措置法の改正で、窓や壁が壊れているなど管理不全の空き家も市町村から指導対象となり、放置すると家屋基準(固定資産税の住宅用地減免など)から除外される可能性があります。
代表的な処分方法の比較
ボロ物件を手放すにはいくつかの方法があります。代表的な手段を比較すると下表の通りです。
処分方法 | 内容 | メリット・注意点 |
---|---|---|
専門業者への売却依頼 | ボロ物件買取を専門とする不動産会社に買い取ってもらう | 即時売却が可能で家財処分も不要。ただし売却価格は相場より安くなる場合も。 |
無償譲渡(0円譲渡) | 0円物件サイトなどで譲受希望者を募集し、希望者に無料で譲渡する | 処分費用がかからない。しかし譲受者が現れないと成約しない。 |
解体して更地売却 | 建物を自己手配で解体し、土地部分だけを売却する | 土地の利用価値を活かせる場合がある。一方、解体費用(数百万円)は高額になる。 |
自治体の支援活用 | 自治体の空き家相談窓口に相談したり、解体・リフォーム助成金を利用する | 自治体によっては解体費用の一部補助が得られる。助成条件や手続きの確認が必要。 |
上表のように、ボロ物件処分にはそれぞれ一長一短があります。以下で各方法を詳しく解説します。
専門業者に依頼してボロ物件を処分
ボロ物件処分で最も確実なのは、「訳あり物件専門」の不動産買取業者に売却する方法です。これらの業者は“どんなに傷んでいても買い取ります”と宣伝しており、全国にネットワークがあります。
一般的な不動産仲介では取り扱えない物件でも、専門業者なら実費ベースで買い取ってもらえることがあります(査定額が0円だった場合でも処分は依頼できます)。
買取と仲介の違い
通常の仲介売却では買い手を探す必要があり、売れるまで時間もかかります。さらに仲介手数料も発生します。一方で買取依頼は業者が直接物件を買い取るため、売買契約後にすみやかに現金化でき、手続きもスムーズです。
買取価格は相場より低めになることが多いものの、家具家電の処分や大がかりな掃除は不要です。自己負担を減らして確実に手放したい場合は買取が有効です。
依頼の流れと注意点
まずは複数の専門業者に無料査定を依頼しましょう。電話やウェブで概略を問い合わせても良いです。査定後、訪問チェックを経て売買価格の提示があります。契約内容には「現状のまま引き渡す」条件が含まれる点を確認し、内装・付属品も含め業者に引き渡す旨を書面で取り交わします。
契約後は業者が書類手続きを進め、通常は数日以内に代金が振り込まれます。契約直前に取り消しができないケースもあるので、契約条件(とくに補修義務や過去の瑕疵情報)が明確になっているか注意しましょう。
専門業者利用のメリット
- 処分手続きが丸ごと任せられ、急ぎの場合も即日現金化が可能です。
- 建物内の家財や汚れも引き渡し不要で、業者がまとめて処分してくれます。
- 一般仲介と異なり営業活動・広告費用が不要なので、売却までのコストを抑えられます。
- 業者が相場を据え置いて買い取ってくれる例もあり、一般市場より安定して取引できます。
一方で注意点としては、査定価格が高くはならないことが挙げられます。
また、契約成立後は物件の所有権が移転するため買い戻しはできません。複数社に査定して比較することで、より納得のいく条件を選びましょう。
市区町村や相談窓口でボロ物件を処分
地方自治体には空き家・解体工事に関する相談窓口が設置されていることがあります。
たとえば都道府県や市町村の「空き家対策課」や「住宅セーフティネット窓口」には経験豊富な担当者がいて、ボロ物件の処分方法や利用できる助成制度について無料でアドバイスしてくれます。
まずはお住まいの自治体窓口に問い合わせてみましょう。
自治体の空き家相談窓口
国土交通省が推奨する「空き家・空き地バンク制度」を備えた自治体では、売主と買主をつなぐマッチング支援が行われています。
登録は無償で、都市計画委員会などで情報提供が受けられます。
また、担当窓口へ相談すると地元の不動産業者や解体業者との連携情報を紹介してもらえる場合もあります。
助成金や補助金を活用
多くの自治体は空き家解体や耐震・断熱改修に対して助成金制度を設けています。たとえば「老朽危険空き家解体補助金」は、倒壊の恐れがある建物の解体費用を自治体が一部負担する制度です。
要件としては「住宅や所有者の年齢」「前年度の固定資産税を納めているか」といった審査があるものの、事業を活用すれば約半分程度を公的資金で賄えることもあります。まずは自治体ホームページや窓口で最新の助成情報を確認し、申請条件や期日をチェックしましょう。
空き家バンクへの登録
自治体運営の空き家バンクに物件登録する方法もあります。空き家バンクは「登録料不要」で売り手と買い手を結ぶ仕組みですが、実際に成約に至る件数は多くありません。
最新調査では全国的に空き家のうち登録数は1%程度にとどまっており、買い手が見つかる可能性は低い点が課題です。
とはいえ費用をかけずに広く情報発信できる手段でもあるため、時間に余裕がある場合は登録しておいて損はありません。
無償譲渡でボロ物件を処分する方法
お金をかけずに家を引き渡したい場合、「無償譲渡(タダ同然の譲渡)」が選択肢になります。これは「0円物件」サイトに登録して譲渡先を募集する方法で、譲受人が現れれば所有権の移転だけで引き渡せます。
たとえばNPOや空家対策団体が運営する全国の譲渡マッチングサイトに登録すると、希望者から問い合わせが入る可能性があります。
無償譲渡とは
無償譲渡は文字通り売買代金を0円とし、譲受人(新たに住む人)が物件をタダでもらう形です。譲渡先が見つからなければ成立しないため不確実ですが、条件次第では老朽家屋の再活用につながるケースもあります。
譲渡を希望する場合、譲渡条件や固定資産税などの負担について明示した上で登録することになります。
利用の流れ・ポイント
まずは譲渡サイトや自治体の譲渡制度に応募・登録します。譲受希望者が現れたら内見→譲渡契約という流れです。譲渡契約書を作成し、所有権移転登記を行えば手続き完了となります。
注意点として、譲渡後は元所有者の責任はなくなりますが、引き渡し前までの未払金(固定資産税など)は清算しておく必要があります。また、譲渡後の家財や残置物は譲受人のものになるので、価値ある物品は譲渡前に引き取るか処分しておきましょう。
メリットと注意点
- 【メリット】譲渡対価がいらないため、処分にかかる費用負担が不要です。所有者は現金を受け取れなくても、赤字なく家屋を手放せます。
- 【注意点】譲受人が見つからない場合は処分できません。また不動産贈与とみなされると贈与税が発生する可能性があります(家屋の評価額にもよります)。無償譲渡は早期に決定しづらい点に留意し、必要に応じて贈与税の負担など税務面も調べておきましょう。
その他の処分方法
上記以外にもわずかな可能性ですが検討すべき方法があります。たとえば、隣地所有者に購入を打診する手があります。隣地の建物が再建築不可の場合、隣家の持ち主があなたの土地を買い取ることで両敷地で建て替えが可能になります。
ただし、金銭交渉でトラブルになることもあるので、日頃から信頼関係がある相手に絞って相談すると良いでしょう。
隣地所有者への売却提案
隣人が自分の家を再建できない「再建築不可物件」であれば、あなたの土地と併せることで再建築が可能になるケースがあります。この場合、隣家の所有者に売却を持ちかける価値があります。
ただし価格交渉はデリケートなので、互いに納得のいく条件を慎重に話し合いましょう。
自分で解体して更地売却する
自己資金で建物を解体し更地にしてから売却する方法もあります。土地の立地がよい場合や、建物が古すぎて価値がほとんど見込めない場合には有効です。
解体費は通常300万~500万円前後かかるため費用対効果を検討する必要がありますが、たとえば田園地帯など土地需要が高い地域なら、解体費用以上の価格で更地取引される可能性もあります。
相続放棄で負担を減らす
もしボロ物件を相続した直後であれば、相続放棄によって物件の所有権と負担を放棄する選択肢もあります。
相続放棄すると法的には最初から相続人ではなくなるため、固定資産税負担や解体義務から解放されます。
ただし相続放棄は一度行うと取消しができず、他の相続財産も一切放棄することになるので慎重に判断してください。
まとめ
ボロ物件の処分には、「専門業者への買取依頼」「無償譲渡」「自治体相談窓口の活用」「自費解体+土地売却」など複数の方法があります。まずは物件の現状を正しく把握し、要件に合った方法を選びましょう。
専門知識が必要な場合や手続きが不安な場合、まずは自治体や空き家相談機関に相談するのが安全です。個人で対応せず、専門家をうまく利用すれば、適切な方法でボロ物件を早期に手放すことが可能になります。