マンションの買い替えは、子どもの成長や転勤などで暮らしを快適にする機会ですが、その裏には費用や手間、タイミング調整など意外なデメリットもあります。
本記事では買い替え前に知っておきたいポイントを詳しく解説し、安心して住み替えができるようサポートします。
目次
マンション買い替えのデメリットとは?
マンション買い替えとは、現在住んでいるマンションを売却して、新しいマンションへ住み替えることです。子育てや通勤・通学環境の改善などが目的で、部屋数や広さを確保できる点、通勤利便性が上がる点などが大きなメリットです。
たとえば、狭い2LDKから3LDKに買い替えて子供部屋を確保したり、駅近のマンションに住み替えて通勤時間を短縮したりできます。
マンション買い替えの概要とメリット
マンション買い替えを行う最大のメリットは、ライフスタイルや家族構成に合わせて住環境を最適化できることです。部屋数や間取りを増やすことで生活スペースにゆとりを持たせたり、通勤時間が短い場所や新築に近い築浅マンションへの住み替えで利便性を上げられます。
たとえば、駅近くのマンションに買い替えて通勤・通学を便利にしたり、子供の成長に合わせて間取りを広くする促すことができます。
マンション買い替えの主なデメリット
一方、マンション買い替えにはデメリットもあります。売却金額が想定より低くなったり、売買手続きを平行して進めるための時間的・精神的負担が増えます。物件探しに時間がかかったり、売却までの期間が長期化すると、結果的に資金繰りへの影響が大きくなります。
また、住宅ローンの二重払い、引越し回数の増加など、生活面での負担も見逃せません。以下では、これらのデメリットを具体的に解説します。
買い替えに伴う費用・税金の負担
マンション買い替えでは売却と購入それぞれで費用が発生します。特に注意したいポイントは仲介手数料や印紙税、登記費用、そして譲渡所得税などです。これらのコストは合計すると数百万円になることもあるため、事前に把握しておく必要があります。
仲介手数料や印紙税などの諸費用
売買時には、仲介業者への手数料や契約書に貼る印紙税、登記に関わる登録免許税などの費用が発生します。仲介手数料の上限は「売買価格×3%+6万円+税」(例:3,000万円の物件なら約105万円)です。これは売却だけでなく購入時にも発生します(2024年7月以降、800万円以下の物件では一律33万円の上限)。
- 仲介手数料:売買価格×3%+6万円+消費税(例:3,000万円の物件なら上限約105万円)
- 印紙税・登録免許税:売買契約書に貼る印紙税や所有権移転登記に伴う税金
これらの費用は売却だけでなく購入時にも発生します。手元に残る金額が想定より減るリスクがあるため、売却金や手持ち資金から必要額を計算し、諸経費も含めて資金計画を立てておくことが重要です。
住宅ローン残債と繰り上げ返済
現在のマンションに住宅ローンが残っている場合、買い替え計画に大きな影響があります。売却代金でローン残債を完済するのが原則なので、売却額が残債を下回ると不足分を補填したり、新たな借り入れが必要になります。
また、ローンを繰り上げ返済する際には事前返済手数料や税金の調整が発生することも。住宅ローンを残したまま買い替える「繰上げ返済なし」の方法もありますが、その場合は後述の買い替えローンなど別の手法によって資金繰りをする必要が出てきます。
譲渡所得税と買い替え特例
売却して利益(譲渡所得)が出た場合、20%を超える譲渡所得税が課税されます。ただし、自分が住んでいた「マイホーム」の場合は3,000万円の特別控除を利用できます。また、買い替えによる節税制度(買い替え特例)を使えば一定の条件下で税金を繰り延べできるケースもあります。
一方、売却で損失が出た場合は譲渡所得税は発生しませんが、あくまで居住用財産の損失であり、他の所得から差し引けるためには要件があります。税金面の手続きは複雑になりがちなので、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
住宅ローン・資金面での負担
マンション買い替えでは住宅ローンをどうするかが重要なポイントです。特に、売却前に新居を契約すると旧住宅と新居のローンを同時に返済する「二重ローン」や、購入資金を一時的に融資する「つなぎ融資」を利用する必要が生じる場合があります。ここからは、ローンに関連する代表的なデメリットを見ていきます。
二重ローン(二重負担)の可能性
買い先行で新居を購入すると、売却まで旧宅と新居の2つの住宅ローンを同時に返済する状況になります。ローン審査では返済負担率が重視されるため、二重ローンになると審査が通りにくくなるリスクがあります。
また、新旧2軒分のローン返済を継続すると月々の返済額が増え、返済資金に無理が出やすくなります。返済負担の増大は家計の安定にも影響するため、二重ローンが発生する場合はあらかじめ資金の目処を立てておくことが必要です。
つなぎ融資(ブリッジローン)の高金利負担
売り先行方式で新居を先に契約する際などに使われる「つなぎ融資」は、短期間で返済する前提の融資です。金利は通常の住宅ローンより高めに設定されており、年利3~5%程度になることもあります。そのため、実際にローンを利用する期間が長引くほど、利息負担が膨らむデメリットがあります。
また、つなぎ融資を扱っている金融機関は限られており、申し込みや審査手続きにも時間がかかる場合があるので、計画的に進める必要があります。
買い替えローン(住み替えローン)の注意点
既存の住宅ローン残債を新居購入ローンに一本化する「買い替えローン(住み替えローン)」を利用する方法もあります。しかし、買い替えローンは審査が厳しく金利も通常の住宅ローンより高い点がデメリットです。金融機関は複数ローンを返済している状況を慎重に判定するため、年収や物件価値が審査の重要ポイントとなります。
審査通過後も、金利負担が増えることで返済総額が増えたり、返済期間が延びて老後資金に影響する可能性も考えられます。資金調達方法として検討する場合は、各金融機関の条件を比較しておくことが大切です。
売り先行・買い先行方式のそれぞれのリスク
マンション買い替えには「売り先行」と「買い先行」の2通りの進め方があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、選び方によって発生する負担が変わってきます。以下の表で両方式の特徴を比較し、その後に各方式の具体的なデメリットを解説します。
方式 | メリット | デメリット |
---|---|---|
売り先行 | 売却代金を先に確定できるので資金計画が立てやすい | 購入タイミングがずれると仮住まいが必要になる。内覧対応など手間が増える |
買い先行 | 仮住まい不要で新居にすぐ入居できる | 旧宅・新居の二重ローン・維持費がかかる。資金繰りの負担が増す |
売り先行方式のデメリット(仮住まいなど)
売却を先行すると、売却代金を先に確定できるメリットがある一方、買い替え購入とのタイミングが合わないと仮住まいを挟む必要があります。仮住まい期間中は家賃や引越し費用が追加でかかるため、総支出が増えてしまいます。
また、売却活動を行いながら現住居に住み続けるため、内覧希望者が訪れるたびに部屋を整える手間が発生します。常に整理整頓を保たなければならず、生活に制約が生じる点もデメリットです。
買い先行方式のデメリット(二重支払いなど)
購入を先行すると、先に新居に入居できて仮住まいが不要になるメリットがありますが、旧宅を売却するまでの間は旧・新両方の維持費を負担しなければなりません。住宅ローンに加えて固定資産税や管理費も2物件分かかるため、資金計画に余裕が必要です。
売却までの期間が長いほど二重支払い期間も延び、家計への負担が増大します。特に住宅ローンの返済と同時に2軒分の諸費用を支払う必要がある点には注意が必要です。
業者買取(買取保証)のデメリット
不動産会社があらかじめ買い取ってくれる「買取保証」を利用すると、売却を確実に行いやすい一方、価格は相場より低く設定される点がデメリットです。一般的に買取価格は市場価格の60~80%程度になることが多く、数百万円規模で損をするケースもあります。
また、業者によっては費用を差し引いた金額(諸費用控除後)での提示となる場合もあるため、契約前に手数料や追加費用をよく確認しておくことが重要です。
時間・手間・ストレスのデメリット
マンション買い替えは売却活動と購入活動を同時進行するため、手続きが長引いたり煩雑になりやすいです。以下では、買い替えに伴って生じやすい時間的・労力的な負担について解説します。
売却・購入活動の長期化
希望条件に合う物件探しや、売却相談・内覧対応を並行して行うと、期間が長期化するリスクがあります。買い手がなかなか見つからなかったり、予算内で希望に合う新居物件がなかったりすると、全体の取引が予定より大幅に遅れる可能性があります。
取引期間が延びると、その間の住居費や諸費用がかさんで家計の負担が増えます。長期間にわたる煩雑な手続きは精神的なストレスにもなり得るため、売却活動開始から引越しまでのスケジュールに余裕を持って臨むことが望まれます。
内覧対応や仮住まいの煩わしさ
売却が先行する場合、内覧対応の頻度が増えます。急な内覧希望に備え、常に部屋を片付けておかなければならず、日常生活にも気を使う必要があります。内覧のために出かける機会が増えると、家にいないといざという時に対応できない不便も生じます。
さらにタイミングによっては仮住まいへの引越しが発生し、引越し業者の手配や荷物の移動を2回行う手間と費用がかかります。引越しに伴うライフラインの契約変更や住所変更手続きも二重に発生するため、想像以上に手間が増えてしまう点に注意が必要です。
市場リスクとライフプランの不確実性
マンション買い替えは長期・高額の取引になるため、価格変動や将来の生活設計に大きな影響を受けます。市場の下落リスクや予期せぬライフイベントによる計画変更の可能性について知っておきましょう。
マンション価格の下落リスク
不動産市場は景気や金利の影響を受けやすく、当初見込んだ価格で売却できないリスクがあります。近隣で再開発計画が中止されたり、大規模修繕費用が増額されるなどの要因で価格が下落するケースも考えられます。
買い替え時に金利上昇が進んだり、景気悪化で中古需要が減ると、売却価格が予想より低くなり、資金計画に狂いが生じます。市場変動を予測するのは難しいため、値下がりリスクを考慮して余裕を持った計画を立てることが重要です。
希望する物件が見つからないリスク
売却金額を見越して予算を決めていても、希望条件(広さ・立地・設備など)に合う物件がすぐに見つからないリスクがあります。特に人気のエリアや築浅物件を探している場合、何度も内覧しても適当な物件に出会えないことがあります。
条件を緩めると予算が不足し、予算を上げると住宅ローン負担が増えます。妥協が難しい場合は、エリアや間取りにこだわるより優先度を整理し、無理のない範囲で条件を組み合わせて検討しましょう。
ライフイベントの変化による影響
引越しの需要となるライフイベント(結婚・出産・転勤・リタイアなど)は将来の計画にも大きく影響します。たとえば「子どもが増えるから住み替えよう」と思っても、数年後に子どもが独立すれば今の広さが持て余すかもしれません。また、転勤予定が先延ばしになったり退職年齢が変更になったりすると、住み替え計画自体を見直す必要が出てきます。
人生の変化は予測しづらいため、買い替え計画は余裕をもって立てることが大切です。将来的に売りやすい物件かどうかも判断しつつ、無理のない資金計画とスケジュールを組むよう心掛けましょう。
まとめ
マンションの買い替えには、住環境の改善や資産価値向上といった大きなメリットがありますが、費用増加や手続きの煩雑さなど多くのデメリットもあります。特に、売買時にかかる諸費用や二重ローン、スケジュール調整の難しさは見落としがちです。これらの注意点を把握せずに進めると、予想以上の負担やストレスに見舞われる可能性があります。
したがって、買い替えを検討する際は事前に費用をしっかり試算し、市場状況や自分の資金計画を十分に確認しましょう。専門家にも相談しながら慎重に進めることで、住み替え後の生活を安心してスタートできます。