近年、複数の不動産を相続したり投資用に買い増したりして売却を検討する人が増えています。しかし、意図せず法律違反となるリスクに注意が必要です。不動産の売却を継続的・反復的に行う「反復継続」は、宅地建物取引業法で無免許営業とされ、重い罰則の対象になります。
本記事では、反復継続の概要や典型的なケース、違反時の罰則、違法とならないための対策をわかりやすく解説します。自分の不動産売却計画にぜひお役立てください。
目次
不動産売却の反復継続とは?違法性と基本ポイント
不動産の売買には、宅地建物取引業法で許可を受けた事業者だけが営利目的で取引を行えるというルールがあります。そのため、個人でマイホームや相続物件を1度だけ売却する場合は基本的に問題ありませんが、何度も繰り返し売買取引を行うと法律で禁じられた無免許営業にあたる可能性があるのです。これが「反復継続」に該当する状況です。
ここで注意したいのは、反復継続には明確な回数や期間の基準がない点です。取引回数だけでなく取引の目的や態様、継続性なども総合的に判断されます。その際、営利目的が明らかな場合や、広く一般に対象を募る取引形態だと事業性が高いとみなされやすく、反復継続に該当すると判断される可能性が高まります。
宅地建物取引業法と反復継続
宅地建物取引業法は、免許を持つ事業者以外の営利目的の不動産取引を禁止しています。これにより、無免許で複数の不動産取引を繰り返す行為は違法とされます。たとえ本人に営利目的がなくても、行政庁の判断基準に照らして事業性があると判断されれば「反復継続」に当たり、許可のない営業行為とみなされます。
反復継続の意味と判断基準
反復継続とは、文字通り不動産の売買を反復して継続的に行うことです。法律に明確な定めはありませんが、1年以内に複数回の売買を行うと事業性が疑われやすいと一般的にいわれています。判断基準では「取引の対象者・目的・態様・経緯・継続性」などがチェックポイントとなります。たとえば身内間で取り引きするなど社会的に事業性が低いと判断できる要素があれば、反復継続とみなされにくくなる場合があります。
個人売買と事業売買の違い
反復継続の判断では、個人的な事情による売却か事業的な売買取引かが重視されます。たとえば住み替えや資金繰りのために単発的に売却するケースは事業性が低く、反復継続とはみなされません。一方、複数物件を転売目的で取得・売却するケースや、買い主を自ら募集するなど業者と同様のやり方で取引を繰り返すと事業性が高いとみなされ、反復継続に当てはまる恐れがあります。
反復継続とみなされる具体的な売却ケース
反復継続と判断されやすい具体的な例には、以下のようなケースが挙げられます。
- – 短期間に複数の物件を売却する:1年以内に何度も住宅やマンションなどを売りに出し、取引を繰り返す。
- – 広い土地を分筆して複数人に売却する:1つの土地で区画割りし、同時期に複数の購入者を募る取引形態。
- – 取得後すぐに再販するケース:手に入れて間もない不動産を転売目的で高値で即売却する。
- – 自己広告による販売活動:知人や自社ホームページ、SNSなどを使い買主を自ら募集して取引を継続する。
これらのケースはいずれも事業性が高いと判断される要素が含まれます。たとえば土地の分筆売却では、購入者との関係が不特定多数となり営業行為とみなされやすいです。また、投資目的の転売では利益追求が明らかで、宅建業者的な行動と判断されます。
反復継続に該当した場合の罰則・法的リスク
反復継続に該当すると、宅建業法違反として刑事罰の対象になります。無免許営業にあたるため、法律違反とみなされれば厳しい処罰を受けるおそれがあります。
無免許営業で科せられる罰則
宅地建物取引業法では、無免許での業法違反行為に対して懲役や罰金が規定されています。たとえ本人が免許の必要性を知らずに行った取引であっても、反復継続と判断されれば罰則対象となります。
個人に科せられる刑罰
個人が無免許で反復継続に該当する不動産取引を行った場合、刑法上、
以下の罰則が科せられます。
・懲役3年以下または罰金300万円以下、あるいはその両方が課せられる可能性があります。
たとえ売却で利益が出たとしても、このような刑罰が下れば元も子もありません。また、反復継続が重い違反行為とみなされると、前科が付くリスクもあります。
法人・宅建業者の処罰
法人(不動産会社)や免許所有者が無免許操作に関与していた場合も処罰対象です。特に法人の場合、
・罰金1億円以下や免許取消し、業務停止など重い行政処分が下されることがあります。
事業者側も反復継続的な取引に加担すると厳罰の対象となるため、業者に媒介や買取を依頼する際は信頼できる免許業者かどうか注意が必要です。
反復継続を回避するための対策・注意点
反復継続による違法リスクを避けるためには、取引の事業性を低く抑える工夫が大切です。対策の例を挙げると以下の通りです。
- – 仲介依頼で事業性を低減:売却活動は自分で買主を探さず、免許を持つ不動産会社に媒介依頼しましょう。媒介を通せば営業行為でなくなるため、事業性が低いと判断されやすくなります。
- – 1回の取引で売却を完了:できるだけ売却は1回の契約で終えるようにします。国交省の解釈でも「1回限りの取引」は事業性が低いとされます。ただし、複数人に販売する分譲的な売却は1回取引でも反復継続性を疑われ得ますので注意が必要です。
- – 利益目的の転売を避ける:安く買って高く売るような転売ビジネス的な取引は控えましょう。所有期間が短い物件を売却すると、意図が利益追求と見なされるリスクがあります。
- – 土地分割や自己広告を控える:広い土地は、不動産会社の買取サービスを活用して1件で売却できるようにすると安心です。また、個人でチラシやネット広告を出して買主を募る行為も開かれた営業行為と解釈される恐れがあるため、避けるのが賢明です。
これらの対策を組み合わせることで、自身の取引が反復継続と判断される可能性を減らせます。不安な場合や複数の物件売却を検討している場合は、あらかじめ免許業者に相談し、専門家の助言を得ながら進めることをおすすめします。
まとめ
反復継続とは、法令で許可された免許なしに不動産の売買を繰り返す行為を指し、違反とみなされると懲役や罰金など重い罰則が科せられます。個人的な事情による一度きりの売却であれば問題になりませんが、複数物件の売却や転売目的の取引は事業性が高いと判断される可能性があります。
したがって、反復継続に該当しそうな売却を行う場合は、宅建業者に仲介を依頼する、取引回数を抑える、土地はまとめて売るなどの対策をとり、安全に進めましょう。