不動産売却において、短期間で同じ人が繰り返し物件を売買する「反復継続」は注意すべきポイントです。何度も売却を行うと、宅地建物取引業法の無免許営業に該当し、重い罰則を受ける可能性があります。特に複数の物件を短期間で売却したり、転売目的の売買を繰り返すケースは行政から事業的とみなされやすく、注意が必要です。
本記事では、反復継続性の判断基準や対象となる期間・回数、最新の傾向を踏まえ、具体例や対策を詳しく解説します。
目次
不動産売却で問題となる反復継続の期間
「反復継続」とは、不動産取引を繰り返し継続することで、具体的には同じ個人(または法人)が利益を目的に何度も不動産を売買する状態をいいます。宅地建物取引業法は免許制であり、免許のない個人が事業目的で頻繁に売買を繰り返すと違法になります。
宅建業法では、無免許で宅建業を営んだ場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられると定められています。反復継続と判断されれば、個人でもこのような重い罰則が科される可能性があります。
国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では、取引相手・目的・取得経緯・態様・反復継続性の5つの要素で総合判断するとされ、特に反復継続性は重要視されています。すなわち、利益目的で短期に反復的な取引を行う行為が「業」とみなされるか否かは、総合的に判断されるということです。
反復継続とは何か?
上述のように、反復継続性の有無は取引の継続性や事業性を判断するための概念です。単発の売却だけでは基本的に反復継続には該当せず、マイホームの住み替えや相続財産の売却など個人的な理由・一時的な処分であれば違法とはなりません。
しかし、継続的な利益追求が疑われる売買行為は反復継続とみなされやすくなります。例えばフリマアプリやインターネットを使った転売活動と同様に、短期間にまた貸し、中古売買を繰り返すような取引は宅建業法上「業」に該当すると判断される恐れがあります。個人であっても意図せず反復継続に当てはまることがあるため、注意が必要です。
期間と回数の判断基準
反復継続性は、回数や期間だけで判断されるものではなく、各取引の詳細から総合的に判断されます。国交省のガイドラインでは「1回限りの取引は事業性が低い」と示しつつ、過去の取引実績や将来の取引予定も含めて反復継続性を判断するとされています。
判断の参考として、一般的に考慮される要素には次のようなものがあります。
- 取引の間隔:短期間に集中して取引が行われるほど継続性が高いと判断される
- 取引の規模:大規模な取引は1件でも事業性が高いとみなされやすい
- 取引の目的:投資・利益追求目的の取引は事業性が高いと判断されやすい
- 所有期間:物件の保有期間が短いほど業と判断される可能性が高い
このため、数ヶ月以内に複数回売買を行っていたり、所有期間が極めて短い転売のケースでは反復継続とみなされやすくなります。場合によっては1回の売却であっても、利益目的や今後の継続計画が見えれば反復継続と判断されることがあります。
反復継続とみなされる具体的なケース
具体的にどのような取引が反復継続とみなされるのでしょうか。以下に代表的な例を挙げます。
短期間で複数回の売買を繰り返す
一例として、短い期間内に何度も売却(または購入と売却)を繰り返す取引は反復継続と判断されやすいケースです。例えば、半年から1年以内に2件以上の物件を売買したり、賃貸物件を購入後すぐに転売したりすると、行政は「継続的な事業」とみなす傾向にあります。
なお、反復継続の判断には売却だけでなく「購入」の回数も含まれます。出口戦略として所有不動産を売却し、新たに別の物件を購入して再び売却すると、これだけで2回の取引を行ったことになります。こうした売買を短期間に繰り返すと、反復継続性が強いとみなされる恐れがあります。
土地を分割・開発して複数販売する
広大な土地を複数の区画に分割し、区画ごとに別の買い手に売却するケースも反復継続とみなされやすい例です。国土交通省のガイドラインでも、1回の販売行為であっても区画分けして複数人に売却する場合は反復継続的な取引とされています。このため、広い土地を分割して複数回に分けて売却する場合には、継続的に複数者へ販売していると判断される可能性が高まります。
転売目的で購入・売却する
利益を目的とした転売目的の取引も反復継続とみなされる可能性が高いです。国交省のガイドラインでは「転売するために取得した物件は事業性が高い」とされており、無免許で競売物件を多数購入し転売益を得た事例なども摘発されています。例えば、割安物件を購入後に短期間で高値で転売するような行為は明らかに事業的と判断され、宅建免許が必要と考えられる取引です。
自ら買い手を募って売却する
さらに、自らインターネットや新聞広告で買い手を募って販売すると反復継続とみなされやすくなります。国交省のガイドラインでは「購入希望者を自ら募集して一般消費者に直接販売するものは事業性が高い」と明記されており、実際に無免許の個人が新聞広告で買い手を募集して販売し、検挙された事例もあります。自ら積極的に販売活動を行うことは営業行為と判断されるため、注意が必要です。
反復継続とみなされないための対策
以上のように反復継続性があるとみなされるケースでは、無免許営業の罪に問われかねません。そこでここからは、反復継続と判断されないようにするための具体的な対策を紹介します。
分割売却を避けて一括・買取を検討
複数の物件または広い土地を売却する場合は、できるだけ「まとめ売り」を検討しましょう。土地を分割して複数回に分けて売却する行為は反復継続とみなされる可能性が高いため、1回の取引で完結させるのが望ましいです。たとえば不動産会社による土地の一括買取を利用すると、業者が土地全体を一度に買い取るため取引回数が1回で済み、反復継続のリスクを避けることができます。
短期間での連続売却を避ける
連続して短期間に複数回売却しないように計画を立てましょう。一度物件を売却した後は、しばらく期間を空けることで継続性が薄いと判断されやすくなります。急いで全ての物件を売り切ろうとせず、売却タイミングに間隔を置くことで、反復継続とみなされる可能性を下げられます。
転売目的の取引を控え、期間を空ける
転売目的での売買は事業性が高いと判断されやすいため、明確な転売目的を持つ取引は避けましょう。例えば、競売物件の入札や短期間での売買を繰り返す行為は注意が必要です。また、物件を一定期間保有してから売却するなど、利益目的だけで短いサイクルで繰り返す印象を与えない工夫も有効です。
不動産会社(宅建業者)への相談・協力
自分だけで判断が難しい場合は、宅地建物取引業者(不動産会社)に相談するのが安心です。専門家は取引の内容を把握したうえで法律に抵触しない方法をアドバイスしてくれます。仲介を通じて売却すれば、不動産会社が買い手を探してくれるため取引は1回で済みます。結果として反復継続に該当しにくくなるので、複数物件の売却ではプロの力を借りるのがおすすめです。
まとめ
不動産売却で反復継続とみなされるかどうかは、何度売却したかだけでなく、その動機や売却方法、売却間隔など複数の要素から総合的に判断されます。現在(2025年時点)も宅建業法の基準に変更はなく、短期間に何度も売買を行えば無免許営業と判断されるリスクがあります。複数物件の売却を予定している場合は、今回紹介した対策を参考にし、できるだけ1回の取引でまとめる、売却の間隔を空ける、宅建業者に相談するなどの工夫をしましょう。
市場の動向や最新のガイドラインを確認しながら、反復継続のリスクを避け、安全・安心な不動産売却を心がけることが大切です。