老朽化したボロ物件が売れずにお困りではありませんか?近年、都市農村部を問わず空き家問題は深刻化しています。
しかし、従来の売却一辺倒だった処分方法に加えて、空き家バンクや専門業者による買取、さらには国・自治体の補助金制度など、新しい“処分の常識”が登場しています。
こうした選択肢をうまく活用すれば、放置していた家でも思いがけず高値で手放せる可能性が広がります。
目次
売れないボロ物件、処分の新常識とは?
日本では少子高齢化の進行に伴い、過疎地域だけでなく郊外の住宅でも古びた空き家が増えています。これらの「ボロ物件」は、安全面や設備面の問題、見た目の老朽化などで市場性が低下し、売れないままです。
いわゆる“負動産”化し行き先がなくなる事例は珍しくありません。
従来は「とにかく売却するしかない」という意識が強かったものの、最近は売却以外の方法も注目されています。例えば、地方自治体が運営する空き家バンクでは紹介先を探せますし、専門の不動産業者なら老朽家屋でもそのまま買い取ってくれます。
国や自治体の補助金を活用して簡易リフォームを行い、価値を上げてから売る事例も増えました。これら「新常識」を駆使すれば、売れなかったボロ物件も適切に処分できる道が広がります。
ボロ物件問題は深刻化している
全国で空き家が増える背景には、人口減少や都市部への人口集中があります。特に地方では後継ぎがおらず、古い家屋が放置されがちです。また、築年数が古く耐震性や設備が不十分な物件は、購入希望者から避けられます。
結果的に市場に多数のボロ物件が残留し、空き家率の上昇に拍車をかけています。こうした現状は行政も深刻に受け止めており、対策を進めています。
従来の処分フローと新しい選択肢
従来のボロ物件処分といえば、不動産業者へ仲介を依頼して一般に売り出すか、売れ残ったらそのまま放置するかの二択でした。しかし、いまはそれ以外にも選択肢があります。
活用できる制度・手段は多岐にわたり、例えば民間の専門買取業者なら老朽化していても内見なしで即売却できるケースが増えています。
さらに空き家バンクや自治体補助も加わり、昔より柔軟になっているのが最新のトレンドです。
ボロ物件が売れない主な理由
売れないボロ物件には共通した理由があります。まず、建物自体が老朽化している点です。屋根や外壁の痛みが激しく、耐震・耐火性能が低いと買手が敬遠します。さらに、長期間放置された物件は室内にゴミや害虫が発生しやすく、修繕コストの高さが敬遠の要因となります。
老朽化・設備不良による価値低下
築年数が古いと断熱性や設備が時代遅れで、買主がリフォーム費用を負担しなければならないケースが増えます。例えばトイレや風呂・キッチンが昔ながらのままだと、まともに暮らせるレベルにするには大規模改修が必要です。
こうした費用を考えると、購入希望者は購入価格を値下げ交渉するか、そもそも興味を失ってしまいます。
立地・周辺環境の不利さ
物件の立地条件や周辺環境が不適切だと買い手は見つかりにくくなります。例えば最寄り駅やバス停まで遠い、周辺に商業施設や学校が少ないといった田舎物件では、移住者や子育て世代から敬遠されます。
さらに、一戸建ての密集地でボロ家が建つと防犯上の懸念や景観の悪化も心配材料に。アクセスや立地が弱い物件は、それだけで市場価値が下がってしまうのです。
市場価格とのギャップ
所有者が期待する価値と市場が提示する価格にはズレが生じます。特にボロ物件は土地の価値ばかり重視されがちですが、実際には建物解体費用を見込まれるため売値に織り込みにくいのが現実です。築古住宅は建物評価が低いため、土地価格のみに依存した高額売却は困難です。
売り出し価格が相場とかけ離れている場合、交渉が難航したり、内見そのものが敬遠されてしまいます。
空き家対策法など法律への不安
2015年に成立した「空き家対策特別措置法」により、放置された老朽家屋は特定空き家に指定される恐れがあります。特定空き家に認定されると、市区町村から建物の所有者に対して解体や修繕命令が出される場合があります。
命令に従わないと行政代執行で強制解体されることもあり、その解体費用は所有者に請求されます。このような背景から“いつ行政指導が入るか分からない”という不安も、購入希望者を遠慮させる一因となっています。
売れないボロ物件の売却方法
まずは一般的な「売却」による処分方法を整理します。売り出し方法には主に仲介と買取の二種類があり、それぞれメリット・デメリットがあります。以下の表にまとめました。
処分方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
仲介売却 | 相場に近い価格で買主を見つけやすい | 時間がかかる・仲介手数料が必要 |
買取業者への売却 | 短期間で売却完了できる | 査定価格は相場より低めになりやすい |
更地にして土地売却 | 土地のみでも需要があれば売却可能 | 解体費用が発生する・地域によって土地需要が低い |
不動産仲介業者を利用する
不動産仲介での売却は一般的な手法です。売却活動を不動産会社に依頼すると、物件情報をインターネットや店頭に掲載し、広く買い手を集めてもらえます。仲介売却のメリットは、条件が合えば市場価格で売れる可能性があることです。
しかし、ボロ物件の場合は情報公開しても内覧希望者がなかなか現れません。売却期間が長引くケースも多く、仲介手数料や固定資産税などをその間も支払い続けるリスクがあります。
買取業者に売却する
一方で、専門の買取業者に売却する方法も選択肢です。買取業者は空き家や古家を専門に取り扱い、事情により返礼期さずそのままの状態で買い取ってくれます。メリットは迅速性です。一般的に査定してから1か月程度で現金化できるため、早期に手放したい方に向いています。
デメリットとしては、仲介売却よりも低い価格になる点です。業者は購入後にリフォーム・再販を前提とするため、ボロ物件の欠点を価格に織り込みます。ただし、売れ残りリスクを避けられる点は大きな安心材料です。
更地にして土地売却する
ボロ物件を解体し、更地として売却する方法もあります。建物の解体費用(数十万円~)はかかるものの、土地として買い手を探せば利用用途が広がる場合があります。
例えば駐車場や農地転用の可能性が見込める立地であれば、更地にした方が売れやすいケースがあります。
しかし解体費用以上に土地価格が低い場合や、もともと土地需要が無い地域では採算が合わなくなります。解体前に自治体補助の有無も確認しましょう。
オークションや個人売買の検討
最近ではインターネットオークションやマッチングサイトで不動産売買をする方法も増えています。こうした場では不動産会社を介さず直接希望者を募るため、仲介手数料が発生しません。
ただし、一般市場より買い手層が限定的になりがちで、交渉や契約手続きも自己責任となります。専門知識が必要になる点や偽情報に注意する必要があります。個人間での無償譲渡(友人・親戚への譲渡)も一つの手ですが、契約書類の作成など法的手続きはきちんと行いましょう。
売却以外のボロ物件処分方法
売却以外の処分方法には、相続放棄や国庫帰属制度の利用などがあります。ここでは主なものを紹介します。
空き家バンク・譲渡制度の活用
各自治体が運営する空き家バンクに登録する方法です。空き家バンクは、地域住民や移住希望者に物件情報を提供し、マッチングを支援します。登録料は安価か無料のケースが多く、仲介手数料も不要です。
場合によっては無償で譲渡されるケースもありますが、その分手放すことで維持管理責任を免除できます。引き渡し後にリフォーム費用の補助が受けられる制度を併用する自治体もあります。
相続放棄で責任を免れる
相続でボロ物件を引き継いだ場合、相続放棄を検討することも一法です。相続放棄を選べば、遺産全体(住宅・預金・車など)の権利・責任をすべて放棄します。結果としてボロ物件の責任もなくなります。
ただし、相続財産全体がプラスになっている場合は、放棄すると他の財産も失うことになるため、慎重な判断が必要です。なお、相続発生から3か月以内に手続きをしなければならず、手続きが完了すると復活はできません。
相続土地国庫帰属制度を利用する
2023年に導入された「相続土地国庫帰属法」を利用する手もあります。これは相続等で取得した土地を、固定資産税等の支払いなしに国(国庫)に引き渡す制度です。主に宅地や農地、山林などあらゆる土地が対象ですが、建物は含まれません。
申請には手数料(1筆14,000円)が必要で、土地所有者の誓約書や処分案などの提出も求められます。しかし、利用できれば維持管理の負担と将来の税負担から解放されます。実績として、制度開始から約2年で申請件数が4,000件近くに達し、1,700件以上が受理されています(2025年6月時点)。
解体して廃棄する
最終手段として、建物を解体して廃棄する方法があります。地域によっては解体費用の一部を補助してくれる自治体も増えています。例えば、市町村によっては1棟あたり数十万円の解体補助が受けられる場合もあります。
解体後は更地として整理することになり、放置による法的リスクは解消されますが、補助がない場合は自己負担が大きい点に注意しましょう。
ボロ物件の価値を引き上げるコツ
処分前に物件の魅力を向上させることで、より高値で売却できる可能性が高まります。以下のポイントを参考にしましょう。
簡易リフォーム・クリーニング
まずは目に見える汚れや傷みの除去を行います。家の前の雑草を刈る、玄関周りを清掃する、壁や床に汚れ防止のワックスを塗るなど、低コストでできる手入れでも印象が格段に良くなります。
また、簡易的なリフォームとして壁紙を貼り替えたり、水回り設備を磨いたりするだけでも購入意欲は向上します。あまり費用をかけられない場合は、専門業者を頼らず自分でDIY補修を検討するのも手です。
魅力的な写真・情報発信
インターネット上での物件紹介で最も重要なのは写真です。プロのカメラマンによる高品質な写真を用意すれば、見る人の興味を引きつけられます。
特にスマホで閲覧する購入希望者が増えているので、明るく広く見える写真を用意し、説明文にはリフォーム箇所や周辺環境などプラス点を強調しましょう。
内覧を希望する層に合わせ、ターゲットを明確に訴求する情報発信が大切です。
適正価格設定と一括査定活用
価格設定は売れ行きを大きく左右します。相場とかけ離れた価格を付けると、内覧がほとんど来なくなります。複数の不動産会社へ査定依頼する一括査定サービスを利用し、相場を把握しましょう。
そのうえで、ボロ物件にふさわしい価格を設定します。さらには売り急ぎでなければ高値入札の可能性もあるため、定期的に価格見直しを行いながら販売活動をすることも有効です。
生活環境や周辺情報をアピール
物件単体の状態だけでなく、周辺環境も積極的にアピールしましょう。例えば、交通機関や商業施設へのアクセス、地域の自然環境やイベント、子育て支援制度の有無など、住んでみたいと思わせる情報を盛り込むことが大切です。
リモートワークが普及している今では「地方で静かに暮らせる」「広い庭付き」という点は魅力です。地域の資源(海、山、温泉など)があれば写真付きで紹介し、ライフスタイルの提案を行いましょう。
注意:売れないまま放置しておくと、固定資産税が増加するリスクがあります。住宅用地の特例(200㎡以下で6分の1の軽減)が適用外になるケースもあり、税額が最大6倍になることもあります。また「特定空き家」に指定されると、市町村から解体命令を受ける恐れがあります。これらのリスクを避けるためにも、早めに何らかの処分策を検討しましょう。
放置するリスク:税金・法律・周辺トラブル
ボロ物件をそのまま放置すると、時間とともに負担が膨らみます。所有し続けるメリットはほとんどないため、早めに対応することが望まれます。
固定資産税・都市計画税負担が重くなる
空き家の所有者には、毎年固定資産税と都市計画税が課税されます。本来は住宅用地として税率優遇(200㎡以下は6分の1)がありますが、空き家でしかも居住要件を満たさなくなると、この優遇措置が適用外になることがあります。
その結果、税額が6倍に跳ね上がる可能性があります。所有し続ける限り税負担は続くため、売却や譲渡が遅れるほど損失が大きくなります。
空き家条例で特定空き家指定の可能性
特定空き家に指定されると、市区町村から予防・是正勧告が出される場合があります。これに従わないと、最終的に行政代執行で解体され、その費用が所有者に請求されます。
さらに、周辺住民への危険性や景観悪化が認められると罰金対象になるケースもあり、法的責任は重くなります。
空き家条例は自治体ごとに基準が異なるため、早めに自治体窓口で現状を相談しておくことも重要です。
放火・災害リスクと賠償責任
人が住んでいない建物は、放火やいたずらなど犯罪の対象となりやすい傾向があります。また、老朽化した屋根や壁が台風や地震で崩れれば、近隣家屋を傷つけたり通行人にけがをさせる恐れがあります。損害が生じた場合、所有者には賠償責任が発生する可能性が高いです。
特に被害が大きいと自己負担額も増えるため、管理せずに放置するリスクは極めて高くなります。
周辺環境悪化による近隣トラブル
放置された物件は外壁にカビやゴミが付着しやすく、害虫の巣になることもあります。これらが近隣に迷惑をかけると、自治会でクレーム対象となり地域とのトラブルに発展しかねません。
空き地化による雑草の繁茂も景観を損ない、周辺の地価下落に繋がる可能性があります。長期的には地域の信用問題にもなるため、持ち主は早めに対処する必要があります。
まとめ
売れないボロ物件を抱えていると、固定資産税や維持管理の手間、法的リスクが重くのしかかります。しかし最近では、従来の「ただ売る」「放置する」という選択肢以外にも様々な新常識があります。
空き家バンクや専門買取業者を利用して速やかに手放す方法から、相続放棄や国庫帰属制度で法的負担を減らす方法、さらには解体補助制度の利用まで、多彩な方法があります。
さらに、売却するにしても簡易リフォームや魅力的な写真撮影、適切な価格設定を行うことで売却成功率は高まります。何より早めのアクションが重要です。ボロ物件は放置すればするほど価値が下がり負担が膨らむだけですが、適切な対策を講じれば、意外な価格で手放せる可能性があります。
最新の情報をもとに賢く処分方法を選べば、あなたの物件も高く売れる日が来るかもしれません。