マンション売却では入金時期や支払う諸費用がわからず、不安に思う方も多いです。特に売却代金を次の新居の購入資金に充当する予定がある場合は、いつどのようにお金が動くか事前に把握しておく必要があります。
本記事では「マンション売却 お金の流れ」について、売却開始から契約、決済、税金手続きまで各段階で発生する入金と支出のタイミングを詳しく解説します。これからマンションを売却する方が安心して進められるよう、資金の動きと注意点をわかりやすく紹介します。
マンション売却のお金の流れを把握しよう
マンション売却のお金の流れとは、売却活動中に発生する資金の入出金全体のプロセスを指します。最も大きな資金移動が起こるのは「売買契約の締結時」と「決済・引渡し時」の2回です。記事の後半では入金と支払いのタイミングを詳しく見ていきますが、まず全体の流れを把握しておきましょう。
売却準備として物件査定や不動産会社との媒介契約を結ぶ段階では、売主側に費用は発生しません。広告・内覧などの販売活動期間も同様に、売主のポケットマネーが動くことはないのが基本です。購入希望者が現れ、条件が合えば売買契約に進みますが、それまではお金が動かない点を知っておきましょう。
査定~媒介契約:費用はかからない
まず、マンション売却の最初のステップとなる査定依頼や媒介契約締結の段階では、売主がお金を支払う必要はありません。査定そのものは不動産会社が無料で行うのが一般的ですし、媒介契約も不動産会社に売却を依頼する契約ですが、これらに伴う手数料などは売主負担にならないケースがほとんどです。
したがって、査定を受けたり媒介契約を結んだとしても、売却開始時点で売主からお金が出ていくことはないと言えます。まずは複数社で査定を比較し、信頼できる会社と媒介契約を結ぶことに集中しましょう。
売買契約:手付金の入金と費用支払い
購入希望者が現れ、物件の条件で合意すると売買契約を結びます。この際、買主から売主へ手付金が支払われ、これが売主にとって最初の入金となります。一般的に手付金は売買価格の5%程度が相場で、たとえば3,000万円の物件なら150万円が目安です。売主はこの金額を受け取り、売却代金の一部を確保できます。
一方、売買契約時には売主も支払いを行います。主な支出は仲介手数料の半額と印紙税です。仲介手数料は宅建業法で上限が定められており、成約価格が400万円を超える場合、「(成約価格(税抜)×3%+6万円)+消費税」で計算されます。このうち半額を売主が契約時に支払います。また、売買契約書に貼る印紙税も契約金額に応じて売主と買主が各々負担します。2027年3月末までは軽減措置が適用されているため、通常より印紙税が安くなる場合があります。
決済・引渡し:残代金の受け取りと費用支払い
売買契約後、買主は住宅ローン審査などの手続きを進め、約1~2か月後に決済・引渡しとなります。このタイミングで、買主が金融機関から残代金を売主に支払います。残代金とは売買価格から手付金を差し引いた金額で、3,000万円の物件で150万円の手付金を受け取っていれば、残代金は2,850万円です。決済日にこの残代金が売主の口座に一括入金され、売却代金の大部分が売主に入ります。
同時に、売主は残りの費用も支払います。具体的には、仲介手数料の残額(契約時に支払った残り半分)や、司法書士への報酬、住宅ローンが残っている場合は金融機関への一括返済などです。これらの支払いは残代金の受け取りと同時に手続きを進めるのが一般的です。全額の受領と費用清算が終われば、売主は物件の鍵を引き渡して取引が完了します。
売却後:税金と確定申告
マンション売却によって利益(譲渡益)が出た場合、翌年の確定申告で所得税・住民税を納める必要があります。譲渡益は売却価格から取得費と諸費用(仲介手数料や登記費用など)を差し引いた金額で計算し、税率に応じて税額が決まります。住宅ローン控除の適用期限などもあるため、売却益が出た際には早めに税務署で確認しましょう。
なお、固定資産税は「その年の1月1日時点の所有者」が納めるため、途中で引き渡しても当該年度分は売主負担となります。ただし、実際には売主と買主で日割り計算の精算が行われることが多いです。以上がマンション売却から入金・支払いまでのおおまかな資金の流れです。
売買契約時のお金の流れ
マンション売却の売買契約を締結した時点で、お金の動きが発生します。最も大きいのは手付金の受け取りです。買主が売却価格の5%程度を手付金として支払うケースが一般的で、売主は契約時にその金額を現金として受領します。手付金は売買契約が成立した証拠金の役割もあるため、通常は返済不要です。ただし、後述する契約解除のルールには注意が必要です。
同時に、売主は仲介手数料の半額と印紙税を支払います。たとえば3,000万円の場合、仲介手数料の上限は税抜で「3,000万円×3%+6万円」なので、その半額を契約時に支払います。印紙税も契約書に応じた金額を売主・買主で折半します。これらが売買契約時点で発生する主な支出項目です。
手付金の受取
売買契約の締結時に売主が受け取る手付金は、マンション売却における主な資金源の一つです。手付金は通常、売買価格の約5%程度が相場で、契約成立の証拠金となります。例えば3,000万円の売却であれば150万円ほどを手付金として受領することが一般的です。売主は契約が確定した時点でこの金額を入金され、売却資金に充当できるようになります。契約後すぐに手付金分のお金が手元に入るため、次の住まいの頭金などに一部を充てる方も多いです。
ただし、手付金には解約時のルールもあります。契約解除の際には、買主の都合であれば手付金を放棄(売主の収入)、売主の都合であれば受け取った手付金を返金し、さらに同額を買主に支払う「倍返し」が必要です。万が一売買が白紙になった場合に備え、手付金は慎重に管理する必要があります。
仲介手数料の支払い(半金)
売買契約締結と同時に、売主は不動産会社へ仲介手数料の半金を支払います。仲介手数料の上限額は宅建業法で定められており、成約価格が400万円を超える場合、「(成約価格(税抜)×3%+6万円)+消費税」で計算されます。つまり、売却価格3,000万円の場合は税抜きで「3,000万円×3%+6万円=96万円」が上限となり、その半額の48万円(+消費税)を売主が契約時に支払います。
仲介手数料は成功報酬の性質があるため、売買契約が成立した時点で発生する支出です。ただし、半金(半分)しか支払わないケースもあり、残りの半額は決済・引渡し時に支払うのが一般的です。
印紙税の支払い
売買契約を締結する際には印紙税が発生します。印紙税は契約書の金額に応じて課税されるもので、売主と買主がそれぞれ負担します。金額は契約金額によって異なり、近年は軽減措置が適用されているため税額が下がっています。例えば3,000万円の契約では印紙税が1万円の場合が多いですが、2027年3月末までは軽減税額が適用になるなどタイミングによって負担額が変わることがあります。契約書作成の際に印紙を貼って消印することで納税とみなされるため、売主は指示に従って印紙税を支払います。
決済・引渡し時のお金の流れ
売買契約締結後、数週間~数ヶ月の準備期間を経て売買の決済・引渡しが行われます。決済時には買主が融資実行され、売買価格から手付金を差し引いた残代金が売主に振り込まれます。この「残代金」は売主にとって最大の入金となり、売却代金の大部分を回収できます。たとえば手付金150万円を受け取った3,000万円の物件であれば、残代金は2,850万円です。決済日に融資が実行されると、金融機関から売主口座へ残代金が入金されます。
また、決済・引渡し時には売主側の支払いも発生します。主に、残りの仲介手数料(契約時に支払った残額)や、所有権移転登記に伴う司法書士への報酬、住宅ローン一括返済の手数料などです。住宅ローンが残っていた場合は、この段階で売却代金を充当してローンを完済します。これらの支払いは残代金と同時に行われ、不動産の引渡しと所有権移転手続きが完了した時点で取引は最終的に完了します。
残代金の受取
決済・引渡し日には、売主は残代金を受け取ります。残代金は売買価格から手付金を差し引いた残額で、売主最大の入金になります。たとえば3,000万円の物件で手付金150万円を受領していれば、残代金は2,850万円です。決済日に銀行振込で売主の口座に振り込まれるのが一般的で、この時点で売主の手元に大部分の売却代金が入ります。
仲介手数料の支払い(残額)
売買契約時に仲介手数料の半額を支払っていない場合、決済時に全額を支払います。また、契約時に半額のみ支払っていた場合は、残りの半額を決済時に支払います。つまり、仲介手数料の不足分を決済日に不動産会社に支払う流れです。これにより、売主と買主の両方が最終的に仲介手数料を全額納めたことになります。
登記費用・ローン返済
所有権を買主へ移転する登記手続きには司法書士報酬や登録免許税などの費用がかかります。これらの費用は通常、売主と買主で負担方法を合意し決済時に精算します。また、売主に住宅ローンが残っている時は、この段階で売却代金を充当してローンを一括返済します。金融機関では抵当権抹消の手続きも同時に行われ、ローン返済が完了すれば抵当権なしで所有権移転が完了します。
売却にかかる費用と税金
マンション売却に伴って発生する費用には、仲介手数料や印紙税のほか、多くの項目があります。まず仲介手数料は売買価格に応じて計算される額で、成功報酬型のため売買契約が成立した時点で売主・買主が支払います。印紙税は契約書にかかる税金で軽減措置が適用されますが、契約金額によって数千円~数万円程度の負担が生じます。
これら以外にも負担項目があります。たとえば、決済・引渡し時にはローン一括返済手数料や抵当権抹消費用がかかり、所有権移転登記に伴う司法書士報酬なども発生します。さらに、売却益が出た場合には譲渡所得税や住民税の課税もあるため、翌年の確定申告で税金を納める必要があります。税額は売却価格から取得費・売却費用を差し引いた譲渡益に税率を適用して算出します。
また、固定資産税や都市計画税は毎年1月1日時点の所有者が負担します。年度途中で売却した場合でも、基本的には売主がその年の税金を支払いますが、売主・買主間で日割り清算するのが一般的です。以上のように、売却にかかる費用や税金は多岐にわたるため、事前にしっかり把握して準備しておくことが重要です。
仲介手数料の計算方法
仲介手数料は不動産売買価格に応じて設定されており、宅建業法では成約額に応じた上限が定められています。具体的には、成約価格が2,000万円以内なら「5%(税抜)」、2,000万円超~4,000万円以下なら「4%+2万円(税抜)」、4,000万円超なら「3%+6万円(税抜)」が上限です。たとえば3,000万円の売却価格であれば「3,000万円×4%+2万円=122万円(税抜)」が最大額となり、これに消費税が加わります。
この手数料は売主と買主が折半して支払うのが慣例です。通常、成約時に両者が不動産会社に支払うため、各自手続きを行います。
不動産売買の印紙税
不動産売買契約書には印紙税が必要で、契約金額により金額が異なります。2027年3月末までは軽減措置が適用され、たとえば売買価格1,000万円以下なら2,000円、1,000万円超~5,000万円以下なら1万円の印紙税です(従来は2万円)。契約時に売主・買主双方が印紙を貼って印紙税を納めるため、印紙税相当額の立替が発生します。
この軽減措置の適用期限を過ぎると税額が上がるため、契約タイミングに注意が必要です。
譲渡所得税と確定申告
マンションを購入した価格より高く売却して利益が出た場合、譲渡所得税が発生します。譲渡益は「売却価格-(取得費+売却費用)」で算出し、これに税率を掛けて税額を計算します。譲渡所得税には通常の住民税・所得税のほか復興特別所得税が加算されます。取得から売却までの期間が5年超であれば税率が低くなるため、中長期保有がお得です。売却益がある場合は翌年2~3月に確定申告を行い、税金を納める義務があります。
なお、マイホームとして一定の要件を満たす場合には3,000万円控除や軽減税率の特例を受けられる可能性があります。制度要件を事前確認し、必要に応じて税理士や税務署に相談しておきましょう。
固定資産税の日割り
固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課税されます。したがって、売買契約を年度途中で締結しても、その年分の固定資産税は原則的に売主が納めます。ただし、売主・買主間で日割り清算するのが一般的です。たとえば1月1日時点の年税額を365日で割り、引渡日までの日数分を売主が負担し、引渡日以降は買主が引き継ぐ形です。所有権移転登記の際に清算金を決済に含めるケースも多いため、担当者と調整しておくとスムーズです。
住み替え時のお金の流れ
マンション売却と同時に新居購入を考える住み替え時は、資金計画がより複雑になります。住み替え方法には「売り先行」と「買い先行」があり、それぞれメリットとデメリットがあります。以下に両者の比較を示します。
| 方法 | メリット | デメリット | 
|---|---|---|
| 売り先行 | 売却代金が先に得られ、資金計画が立てやすい | 売却から購入の間に仮住まいが必要になる場合がある | 
| 買い先行 | 新居が先に確保でき、引越しがスムーズ | 旧居と新居のローンを同時に支払うリスクがある | 
売り先行では、旧居の売却代金で新居の頭金やローン返済を行う資金計画が可能です。ただし、旧居が売れるまで仮住まい・二重生活の費用がかかる場合があります。一方、買い先行では購入資金に自己資金を組み込める一方で、旧居の売却が遅れるとローン負担が二重になる点が注意点です。どちらの場合も、仮住まいや引越し費用など余分な出費を想定して資金計画を立てることが大切です。
契約解除時の手付金の取り扱い
手付金は基本的に売主のものですが、契約が解除になると返還義務が発生する場合があります。買主都合で契約解除となる場合、売主は手付金を返す必要はありませんが、売主都合で解除する場合は受け取った手付金を返金し、さらに同額を買主に支払う「倍返し」が必要です(手付金の保全措置)。万が一の事態に備え、契約時に受け取った手付金は簡単に使い切らずに、返済できる分は残しておくことが重要です。
入金までの期間に注意
決済・引渡しの当日でも、お金がすぐに売主口座に振り込まれないことがあります。金融機関の処理や書類手続きのため、実際に入金されるのに数日かかるケースもあります。特に住み替えで入居日程が迫っている場合は、決済のタイミングに余裕を持って計画を立てることが大切です。
税金負担と申告の注意
売却で利益が出た場合の税金負担にも注意が必要です。譲渡所得税などの税額は高額になることが多く、3,000万円控除や軽減税率などの特例を受けられるか事前に確認しておくべきです。また、確定申告時期を忘れるとペナルティが発生します。売却資金をすべて使ってしまわず、将来の税金支払いに備えておくようにしましょう。
まとめ
マンションを売却する際は、売買契約の締結時と決済・引渡し時にお金の大きな動きがあります。契約時には買主から手付金を受け取り、仲介手数料の半金や印紙税を支払います。決済時には残代金が入金されると同時に、残りの手数料や登記費用、住宅ローン返済などを精算します。さらに、売却益が出た場合は税金の支払いも発生します。
これらのお金の流れや支払い項目を事前に把握しておくことで、売却スケジュールに合わせた資金計画が可能になります。最初に紹介した注意点にも留意して、手付金の扱いや税金対策を確認しながら進めれば、安心してマンション売却を進められるでしょう。