マンション売却では代金の受取り時期が気になるポイントです。一般的には売買契約成立時と物件引き渡し時の2回に分けてお金が動きます。
契約成立時には手付金を受け取り、引き渡し時に残りの額が振り込まれる仕組みです。これらの入金タイミングや必要書類を事前に把握しておけば、売却後の資金計画に余裕が生まれます。
本記事では、マンション売却時のお金の流れとチェックすべきポイントを解説します。
目次
マンション売却で入金されるタイミングはいつ?基本フロー
マンションを売却した場合、売主が代金を受け取るタイミングは主に2回に分かれます。1回目は売買契約の締結時で、買主から手付金(契約金)が支払われます。2回目は物件の引き渡し(決済)時で、売買代金から手付金を差し引いた残額が振り込まれます。
途中に中間金が入るケースはほとんどなく、契約時に受け取った手付金の残りを最終的に受領する流れが標準です。売買契約締結から引渡しまでは一般的に1~3か月程度かかり、手付金以外の資金を生活費に充ててしまわないよう注意が必要です。
| タイミング | 入金内容 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 売買契約締結時 | 手付金(保証金) | 売却価格の5~10%程度 |
| 物件引渡し・決済時 | 残代金(手付金差引額) | 売却価格-手付金(全額) |
売買契約成立時に手付金を受け取る
売買契約を締結したタイミングで、買主から手付金が受け取れます。手付金は売買代金の約5~10%程度が相場とされることが多く、例えば6,000万円の物件なら300万円~600万円ほどです。手付金は契約成立の証となる保証金であり、契約をキャンセルする際の違約金としての機能もあります。
手付金は契約書に署名し受渡しが完了したその日に、買主から現金もしくは振込で支払われます。売主はこの手付金を受け取ったうえで、売買契約の成立を固めます。契約と同時に、売主は仲介会社に仲介手数料の半額(契約時分)を支払うのが一般的です。
手付金はあくまで売買代金の一部です。契約後、万が一取引が正常に進まなくなった場合、契約状況によっては手付金の返金や違約金の支払いが生じます。そのため、手付金は引き渡しまで余裕をもって保管し、新居購入資金などに充てる際も計画的に使いましょう。
物件引渡し時に残代金を受け取る
物件の引き渡し(決済)時には、残代金を受け取ります。残代金とは、売買代金から先に受け取った手付金を差し引いた全額です。例えば、売却価格6,000万円で手付金300万円を受領していれば、引渡し時には5,700万円が振り込まれます。
引渡し当日は、売主と買主(およびそれぞれの仲介会社や司法書士)が銀行や金融機関、または指定した場所に集まります。買主は住宅ローンなどで用意した残代金を振り込み、売主は所有権移転登記に必要な書類一式を受け渡します。この決済処理をもって所有権が移転し、売主は代金を全額受領することになります。
残代金は基本的に銀行振込での受け取りとなります。数千万円単位の大金を扱うため、安全かつ確実な振込が推奨されます。現金決済を選ぶ場合は、警備付きの場所での授受など厳重な対策が必要です。また、決済完了後は住宅ローン残債の完済や翌年の譲渡所得税に備えて資金を確保しておきましょう。
入金タイミングの全体スケジュール
売買契約締結から引き渡しまでの一般的なスケジュールは以下の通りです。まず媒介契約締結後に買い手が見つかり、交渉を経て売買契約を締結します。このとき契約金(手付金)を受け取ります。その後、買主の住宅ローン承認や日程調整がおこなわれ、1~3か月ほどで決済日(引き渡し日)が訪れます。当日は登記手続きと残代金の受領が同時に進み、売買が完了します。
- 売買契約締結:手付金を受領&仲介手数料(半額)支払い
- 住宅ローン審査・調整期間:1~3か月程度
- 引き渡し・決済:残代金振込&登記手続き
売買契約締結時に受け取る手付金と仲介手数料
売買契約が成立すると、売主は買主から手付金を受け取り、不動産仲介会社に仲介手数料の一部を支払います。手付金は売買代金の5~10%程度に設定されることが多く、契約成立の証拠金として機能します。契約当日には手付金が支払われると同時に、仲介手数料の半額を仲介会社へ支払います。なお、仲介手数料の上限(売買価格×3%+6万円[税別])は法律で定められており、この範囲で請求されます。
仲介手数料の支払いは、一般的に契約時と決済時の2回払いが慣習です。これは取引が中止になった場合のリスク対策として広く採用されています。例えば、売却価格2,000万円の場合、仲介手数料の上限72.6万円(税込)の半額36.3万円を契約時に支払い、残りを引渡し時に支払います。
手付金とは?その役割と金額相場
手付金は買主が契約をキャンセルしにくくするための保証金であり、売主にとっては取引成立の証として重要です。一般的に売却価格の5~10%程度に設定され、相場以上の金額を設定すると買主にとって契約解除のハードルが高くなり、売主を守る効果があります。一方で手付金をあまりに少額にすると、買主が契約を軽んじてしまうリスクもあります。
手付金の種類には「証約手付」「違約手付」「解除手付」がありますが、通常の仲介売却では「証約手付」にあたります。この証約手付は契約締結後の解約には返金不要となる性質を持ち、契約解除時の扱いにも注意が必要です。売主都合で契約解除する場合、受け取った手付金の倍額を買主に支払う必要が生じるため、契約は慎重に進めましょう。
手付金の支払いタイミングと方法
手付金は売買契約締結当日に支払われます。契約書に署名・押印し契約内容を双方が確認したうえで、買主から売主へ現金または銀行振込で手付金が手渡されます。具体的には、不動産会社の担当者立ち会いのもと、その場で金銭の授受をおこなうことが多いです。
手付金の受領と同時に、売主は媒介契約に基づいて仲介手数料の一部(通常は半額)を支払います。仲介手数料は高額となるため、契約時にすべてを支払うことも可能ですが、多くの売主は資金繰りを考慮して分割支払いを選択しています。
仲介手数料の支払いタイミング
前述のとおり、仲介手数料は契約成立時と物件引き渡し時に2回に分けて支払うのが業界の一般的な慣習です。これは契約が解消された場合のリスクを分散するために広く採用されています。
仲介手数料の上限(売買価格×3%+6万円[税別])は法律で定められており、この上限内で支払います。支払い方法は仲介会社との合意によりますが、契約時に仲介手数料の半額を支払い、引渡し時に残額を支払うケースが多くみられます。
契約解除時の手付金の扱い
契約締結後に何らかの事情で契約を解除する場合、手付金の扱いが重要です。買主の都合による解除(例:住宅ローン不承認など)では、買主が支払った手付金を放棄すれば契約を解除できます(いわゆる「手付放棄」)。売主の都合で解除する場合は、受領した手付金の2倍を買主に返金する必要があります(いわゆる「手付け解除」)。このようなリスクに備え、契約解除に関する特約条項をしっかり確認しておきましょう。
物件引き渡し時に受け取る残代金と決済手続き
引き渡し当日は、残代金と所有権移転の最終手続きが同時に行われます。売主は事前に印鑑証明や権利証(登記識別情報)などの必要書類を用意し、買主は住宅ローン実行に向けた金融機関との最終調整を済ませておきます。当日はそれぞれが金融機関で待ち合わせ、残代金の振込とともに書類の受け渡しを完了させるのが一般的です。
登記手続きが完了すると物件の所有権が買主に移転し、売買契約が正式に終了します。売主は残代金の全額を受け取り、金融機関にローン残債があればその場で完済します。また、売却価格が購入価格を上回っている場合は翌年に譲渡所得税が発生するため、売却益の計算・確定申告の準備も並行して進めておくと安心です。
残代金とは?手付金との差額
残代金は、売買代金から先に受け取った手付金を差し引いた金額です。契約時に受け取った手付金が売買価格の5~10%程度である場合、引き渡し時には残りの90~95%に相当する大部分を受領します。具体例として、売却額6,000万円で契約時に300万円の手付金を受け取っていれば、引渡し時には5,700万円の振込となります。
決済とは?引き渡し当日の手続き
決済とは、売主が物件を引き渡し、買主が代金を支払う最終手続きのことです。当日は銀行や司法書士事務所などで、残代金の振込、登記申請書類の署名捺印、物件の鍵の引き渡しなどを一度に進めます。このタイミングで売主は残代金を受け取り、買主は物件の所有権を正式に取得します。
決済をスムーズに進めるには、事前準備が欠かせません。売主は実印、印鑑証明書、権利証などを揃え、買主は住宅ローンの承認を得て振込の手配を整えておきます。こうした準備が整っていれば、当日は数時間で手続きが完了し、売却資金の受け取りと所有権移転が同時に完了します。
残代金の支払い方法(振込・現金)
残代金は原則、銀行振込で受け取ります。数千万円規模の金額を扱うため、安全かつ確実な振込が推奨されます。ただし、どうしても現金決済を希望する場合は、あらかじめ売主・買主間で金額を確認し、警備付きの場所で受け渡しを行うなど、厳重な注意が必要です。
当日までに必要な準備(書類など)
引き渡し当日までに売主が準備すべき書類は、実印と印鑑証明書、登記識別情報(権利証)、住民票(住所変更がある場合)などです。これらは所有権移転登記に必須です。また、新居の準備や引越し日程も同時進行で進めるとよいでしょう。必要書類を事前に確認し、決済に遅れが出ないよう余裕をもって準備しておくことがトラブル防止になります。
マンション売却から入金までにかかる期間と遅延要因
マンション売却にかかる期間は、媒介契約締結から引き渡しまでトータルで半年程度を想定するのが一般的です。売却活動に1~3か月、交渉・契約締結に1~2か月、そして決済までにさらに1~3か月かかるケースもあります。ただし、物件の立地や買い手のニーズによります。
契約締結後の大きな遅延要因は、買主の住宅ローン審査です。銀行の審査手続きには数週間から1か月程度を要するため、審査の進捗状況によっては決済が延期になることがあります。また、売主・買主双方や仲介会社など関係者の日程調整も重要です。関係者が集まる必要があるため、銀行や登記所の休業日は避けるなど余裕をもって予定を組むことが大切です。
契約締結から決済まで一般的にかかる期間
売買契約締結から物件引き渡しまでの期間は、一般的には1~3か月程度です。金融機関の住宅ローン審査や登記手続きの調整が必要なためです。税金や住替えのタイミングを合わせるなどの手続きを考慮すると、2か月以上かかることもあります。契約直後に全額の入金を期待しすぎず、余裕をもって資金計画を組むことが肝心です。
買主の住宅ローン審査と日程調整
住宅ローンの審査結果が出るまでには通常2~4週間かかります。買主が銀行融資を利用する場合はこの審査期間を考慮し、審査承認を得て融資実行日を決済日に合わせる必要があります。また、売主・買主・仲介会社・金融機関・司法書士など関係者が集まるため、祝祭日や年末年始を避けるなどして決済日程は余裕をもって設定しましょう。
その他の遅延要因と対策
買主のローン審査以外にも、売主側の事情で引き渡しが延期になるケースがあります。例えば、売主が引越し先の確保に手間取る場合などです。このような場合は、「引渡し猶予特約」を契約に盛り込んでスケジュール調整の余地をもたせる方法があります。また、確実に早く現金化したい場合は、売却価格は割安になりますが買取保証や不動産会社による買取(仲介手数料不要)の検討も選択肢になります。
マンション売却時のお金に関する注意点
売却時には、お金に関する以下の点に注意しましょう:
- 手付金は引き渡し完了まで使用せず、万が一に備えて確保しておく
- 仲介手数料は一般的に契約時と引渡時の2回払いであることを確認する
- 買主のローン遅延や契約解除に備え、手付金の金額や契約条件をチェックする
- 売却益に対する譲渡所得税や引越し費用など、諸費用の準備も忘れずに
手付金使用のリスクと管理
受け取った手付金を誤って引渡し前に使ってしまうと、契約解除時に資金不足となるおそれがあります。売主都合で解約する場合、手付金の2倍を返金しなければならず、多額の資金が必要になります。売主は手付金を受け取った後も容易に手を付けず、最後まで大切に管理しましょう。
【大切なポイント】契約成立時に受け取った手付金は貴重な資金です。引渡し前に誤って使用してしまわないよう、必ず手元に留めておきましょう。
買主の支払い遅延や契約解除時の対処方法
万一、買主がローン審査に落ちるなどして決済時に代金を支払えなかった場合、契約解除の可能性が出てきます。一般的な契約特約では、買主都合の解除では手付金放棄で解約、売主都合では手付金倍返しで解除という取り決めが多いです。リスクを抑えるには、契約前に買主の買付証明書やローン条件を確認し、相手の支払い能力を見極めておくことが重要です。
譲渡所得税などの費用計画
売却によって利益(譲渡所得)が生じた場合は確定申告で税金を納める必要があります。取得費などを引いた売却益に応じて税率が変わるため、事前に譲渡所得の概算を出しておきましょう。また、売却資金はすぐにすべて手元に戻るわけではないため、新居購入資金や引越し費用も含めて資金計画を立てることが大切です。
【要確認】売却益に対しては譲渡所得税の支払い義務が生じます。利益が出る場合は税額をあらかじめシミュレーションし、確定申告の準備をしておくと安心です。
まとめ
マンション売却後の入金は、売買契約締結時の手付金受領と物件引渡し時の残代金受領の2回に分かれています。契約時に手付金を受け取り、最終的に残額が振り込まれる流れを理解しておくことがポイントです。
本記事で解説したように、手付金の管理や決済当日の準備、仲介手数料や税金の支払いを含めた余裕ある資金計画を心掛ければ、スムーズな売却完了につながります。