マンションの買い替えで新しい物件を購入したい場合、旧居が思うように売れずに住宅ローンが二重になる「ダブルローン」の状態に頭を抱える方は少なくありません。2025年には住宅ローン金利が上昇傾向にあり、返済負担の増大を懸念する声も聞かれます。
このリードでは、ダブルローンの基本的な仕組みやメリット・デメリットを分かりやすく解説するとともに、マンションが売れない原因や最新の市場動向、売却を加速させるポイントについても網羅的にお伝えします。適切な対策を知ることで、安心して住み替え計画を進められます。
目次
マンションが売れないときのダブルローン活用法とリスク
ダブルローンとは、住み替え時に旧居のローン返済が残っている状態で新たに住宅ローンを組み、結果的に2つのマンションローンを抱えることを言います。買い替えでは、新居を先に購入してから旧居を売る「買い先行」のケースで発生しやすいのが特徴です。
ダブルローンを利用する最大のメリットは、新居の購入タイミングを優先できる点です。例えば理想の物件が見つかった際、旧居売却を待たずに契約を進められるため、買い手の先取りが可能になります。また、引越し時に仮住まいが不要になるなど実生活への負担を軽減できる利点もあります。
しかしダブルローンには負担増のリスクが伴います。売却完了まで旧居・新居両方のローンを返済し続ける必要があり、返済額が単純に2倍になるわけではありませんが、その分返済負担率(年収に占める返済割合)が高まります。特に2025年以降は住宅ローン金利が上昇傾向にあり、万が一売却が長引くと返済計画が大きく狂う可能性も指摘されています。
ダブルローンとは
ダブルローンの基本は、旧居のローン返済中に新居のローンを組むことです。つまり、以下のように2つのローン返済が重なる状態を指します。
- 旧居の住宅ローン返済中に → 新居の住宅ローンを新たに借入
- 旧居の売却完了まで → 二重の住宅ローン返済を続行
この状況では、旧居と新居のどちらも頭金や繰上返済といった返済計画が必要になります。2000年代までは低金利が続いていましたが、2024~25年には日銀の金融政策変更に伴う金利上昇が予想されているため、ダブルローン返済の影響は以前よりも大きくなりつつあります。
ダブルローンを利用するメリット
ダブルローンを選択すると得られる主なメリットは以下の通りです。
- 【買い先行で住み替え可能】 従来の売却先行に縛られず、理想の新居を先に契約できる。
市場に良い物件が出ても旧居売却のタイミングを気にせずに動けるため、買い増しリスクや機会ロスを避けやすい。 - 【仮住まい不要】 売却完了前に新居へ移れるので、引越しと賃貸仮住まいの手間や費用が不要。
結果的に不要な引越し回数を減らせるなど、生活面でのストレスが軽減される。 - 【内覧準備の負担軽減】 旧居に住んだまま内覧対応する必要がない。
売り出し時は旧居の内覧が空き家状態で行われるため、生活感を見せずに対応できる点がメリット。
これらのメリットから、ダブルローンは新居購入の柔軟性や生活の利便性を重視する方に向いています。ただし同時に返済負担が増える点は大きく、利用に際しては資金計画と売却計画の両方を慎重に練る必要があります。
ダブルローンの注意点
ダブルローン利用時には以下の点に十分注意する必要があります。
- 【返済負担の増加】 ダブルローンでは旧居・新居のローン返済を併存するため、毎月の返済額が増大します。返済負担率(年収に占める年間返済割合)が高くなると銀行の審査基準に影響するほか、長期的な資金計画が崩れるリスクがあります。
- 【住宅ローン控除の制限】 旧居にかけている住宅ローン控除はダブルローンになると適用外になります。
2つの住宅ローンに対して同時に控除を受けることはできないため、減税効果を考慮した返済計画が必要です。 - 【賃貸運用の不可】 住宅ローンは「居住用」目的の融資なので、ローン返済中の旧居を第三者に貸し出すことは原則できません。
売却が長引き貸出を検討する場合も、ローン契約違反となる恐れがあるため事前に確認が必要です。 - 【金融機関の承認】 ダブルローン審査では、旧居のローンを組んでいる銀行から承認を得る必要もあります。金融機関によっては融資に慎重になる場合があるため、早い段階で相談することが望ましいです。
- 【年齢制限】 返済期間や年齢による審査も厳しくなります。特に60代後半以上でのダブルローン利用は審査が厳格化するため、年齢に合わせた計画が必要です。
以上のように、ダブルローン利用はメリットと共にリスクも明確です。住宅ローン審査の段階でも返済負担率や年齢条件が厳しくなるため、「ダブルローンを6か月程度で返せる」といったギリギリの計画には危険が伴います。利用を検討する際は十分な貯蓄や収入余裕を確保し、不動産や住宅ローンの専門家にも相談すると安心です。
ダブルローンを組んだ後に売れない場合の対応
万が一ダブルローンを組んだ後に旧居が長期間売れない場合、次のような対策を検討します。
- 【販売価格の見直し】 売り出し価格が相場より高すぎる可能性があります。不動産会社と協力して周辺相場を再調査し、適切な価格に修正します。
- 【物件の魅力アップ】 内覧が少ない場合はリフォームや家財処分、掃除といった売却準備を再度行い、物件の魅力を高めます。照明やカーテンで印象を改善するのも効果的です。
- 【不動産会社を変更】 いま契約している仲介会社で成果が出ないときは、媒介契約を見直し他社に変更します。複数社に依頼する「一般媒介」に切り替える方法もあります。
- 【買取再販サービスの利用】 長期化が避けられない場合は、仲介ではなく不動産会社による買取再販を検討します。現金化が早まりますが、査定価格は相場より低めになる点も考慮が必要です。
- 【住み替えローンへの切替】 もしダブルローンが難しく感じたら、自宅売却後に資金を一本化する「住み替えローン」のプランを検討します。一定期間のみ旧居のローンを一時返済据え置きする等の制度利用も相談に値します。
これらの対策は状況に応じて併用できます。特に価格見直しと不動産会社への相談は、早期に実行することで売却機会の損失を防ぎます。ダブルローンが生じた場合は余裕をもって計画し、不測の事態にも対応できるよう準備しておくことが大切です。
マンションが売れない原因と売却対策
マンションがなかなか売れない原因はさまざまです。まずは売れない理由を見極め、対策を講じることが必要です。ここではよくある原因別に対策を挙げてみましょう。
市場価格とのギャップ確認
最も多い原因が「売り出し価格が相場とかけ離れている」ケースです。物件の広さや築年数、立地条件に見合った価格か、不動産ポータルサイトやレインズの成約事例などを参照して見直しましょう。
相場より高いと購入希望者が現れにくくなるため、必要があればプロの査定を受け価格を調整します。適正な価格設定は売却成功の第一歩です。
物件の魅力を高める工夫
物件自体の見た目や住環境も販売スピードに影響します。内覧時に良い印象を与えるために、不要な荷物は極力片付け、家具配置や照明を工夫して部屋を広く見せるなどの準備を行います。
浴室やキッチンの水回り、壁や床など傷みがある箇所は可能な範囲で修復・清掃しておきましょう。小さな投資で印象が劇的に変わることもあります。
適切な不動産会社選びと販売戦略
仲介会社との契約内容やセールス力も重要です。実績豊富な仲介業者や物件に精通した担当者を選び、チラシ作成やウェブ広告など、多角的なマーケティングをしているか確認しましょう。
媒介契約の種類(専属専任・専任・一般)も見直し、できれば複数社への依頼で窓口を増やして反響を増加させることも検討します。頻繁な進捗報告を受けて、販売方法を臨機応変に修正してもらうようにしましょう。
賃貸活用やリースバックの検討
売却が難しいと判断した場合は、賃貸やリースバックといった別の選択肢もあります。賃貸に出せば家賃収入によって一部資金負担をカバー可能です。ただし前述の通りローン返済中は賃貸契約不可の場合が多いので、ローン完済後か金融機関への相談が前提です。
またリースバックは、自宅を売却してから賃貸で住み続けられる手法で、手元資金を確保しつつ住環境を維持できるメリットがあります。いずれの方法も状況により可否が異なるため、専門家に具体的な条件を確認しながら検討するとよいでしょう。
ダブルローンの審査基準と融資条件
ダブルローンを組むには通常よりも厳しい審査が求められます。ここでは審査や融資条件のポイントを確認します。
返済負担率と年収の関係
金融機関は年収に対する年間返済額の割合(返済負担率)で審査を行います。一般的に住宅ローンでは返済負担率が30~35%以内が目安ですが、ダブルローンでは二重返済分も加味されるため、返済負担率は実質的に高めに計算されます。そのため年収が十分に高く余裕があるかどうかが重要です。
例えば年収600万円で返済負担率30%に抑えるなら年間返済額180万円が限度ですが、既に旧居で年間120万円返済している場合、新居ローンの返済に残り60万円(毎月5万円)しか使えない計算になります。このように、返済計画はシミュレーションの上でさらに余裕を持って考える必要があります。
頭金や資金計画のポイント
ダブルローンでは自己資金(頭金)の多さも重要な要素です。頭金が多ければ借入額が減り返済負担も軽減するため、一般的な借り入れに比べて最低限の自己資金要件が高く設定される傾向があります。また、頭金とは別にいつ旧居が売れて新居の返済一本化ができるか見通しをつけ、それに合わせて資金計画を立てることが必要です。
さらには、万が一旧居が売れ残った場合に備えて短期的な追加資金を確保しておくと安心です。家庭や個人のライフプランに応じ、返済のシミュレーションをより厳しめに行いましょう。
住宅ローン控除や税制面での注意
住宅ローン控除の適用条件も事前に確認しておきます。一般に住宅ローン控除は1物件につき1つのローンにしか適用できないため、ダブルローンが発生すると旧居分の控除は受けられなくなります。
また、旧居を売却して譲渡益が出る場合の譲渡所得税免除(居住用財産の3000万円特別控除など)の適用要件も考慮が必要です。旧居売却と新居購入のタイミングや住まいの居住状況によって税務上の扱いが異なるため、税理士やファイナンシャルプランナーに相談して具体的に確認しておくと安心です。
ダブルローン vs 住み替えローンの選択
住み替えを検討する際、ダブルローンだけでなく「住み替えローン」という選択肢もあります。以下の表で両者を比較してみましょう。
| ダブルローン | 住み替えローン | |
|---|---|---|
| 返済期間 | 旧居と新居のローンをそれぞれ完済まで返済 | 売却前の旧居ローンを据え置き、新居ローンで一括返済 |
| 税制メリット | 旧居の住宅ローン控除は新居購入前の分のみ適用 (旧居控除は消失) |
住み替えローン完済後、新居ローンに一本化するためローン控除は新居に集中 |
| 審査の難易度 | 返済負担が二重になるので審査基準は非常に厳しい | 旧居売却前提で審査、二重返済状態を解消する計画が必要 |
| メリット | 新居購入が先行できる、仮住まい不要 | 一本化が前提なので返済負担の整理が容易 ローン控除の無駄が少ない |
| デメリット | 返済額増加による家計圧迫リスクが高い | 旧居売却を前提にするため売れ残りリスクあり |
両者の仕組みと違い
上記のとおり、ダブルローンは旧居と新居それぞれのローンを同時に抱えるので、返済負担は一時的に増大します。一方、住み替えローンは旧居ローンを一度据え置き、新居のローンとまとめて整理するタイプのローンです。一般的にダブルローンよりも審査難易度がやや低く、税制面でも無駄が少ない特徴があります。
それぞれのメリット・デメリット
ダブルローンは「新居の買い先行」が可能で計画の自由度が高い反面、返済計画の負担が大きくなる点がデメリットです。住み替えローンは返済一本化を視野に入れているため、ダブルローンに比べると負担が軽減される利点がありますが、旧居売却計画の進行が前提条件です。
適したケースの見極め
どちらを選択すべきかは、家計の余裕や売却の見通し、新居の購入時期など総合的に判断します。例えば、旧居の査定額が低い、売却に時間がかかりそうな場合は返済負担を抑えられる住み替えローンが向いています。
逆に、旧居の売却が見込め、新居購入を急いでいる場合はダブルローンのメリットを生かしつつ、借入額を抑えれば計画できるかもしれません。金融機関や専門家と相談しながら、自身の条件に合う方法を選びましょう。
最新の住宅市場動向とマンション売却事情
2024年以降、日本の住宅市場では中古マンション価格の上昇傾向が続いています。東京や大都市部では新築マンションの供給が抑えられている一方で、需要の高さから中古住宅の相場は高い水準で推移しています。そのため、マンション売却時には相場を上回る価格で売り出せる地域もあります。
しかしながら金利環境の変化も注意点です。2024年末から2025年にかけて日銀の金融政策転換により金利が上昇する見通しが報じられており、これによって住宅購入のハードルが高くなる可能性があります。金利上昇は月々の返済額増加につながるため、買い手の資金計画に影響を与え、取引の停滞リスクも指摘されています。
地域によってはすでに動きがあります。例えば東京都区部では中古マンション価格がバブル期に匹敵する水準になっており、地方の郊外部でも価格下落は見られません。しかし一方で、金利上昇の影響が徐々に効いてきており、価格が高止まりしている都市部から一転して売れ行きが鈍化する可能性も考えられます。
まとめると、マンション売却に関しては価格がまだ高く売却条件が良いタイミングである可能性が高いものの、変動しやすい市場環境には慎重な対応が必要です。売却の適切なタイミングや価格設定を見極めるため、市場動向や金利のニュースをこまめにチェックし、有利な条件が整ううちに行動することが重要です。
不動産専門家からのアドバイス
マンション売却やダブルローンに関する悩みがある場合、専門家への相談は有効です。不動産会社や住宅ローンアドバイザーに相談することで、個別の状況に応じた具体策が得られます。ここでは売却を成功させるための注意点をいくつか紹介します。
売却価格の再査定
売り出しから一定期間経っても反響がない場合は、価格の再査定を行います。新規の査定や市場調査を通じて、相場に合った価格に修正しましょう。場合によっては広告戦略も見直し、写真やセールスポイントの打ち出し方を改善することで注目度が変わることがあります。
資金計画の再確認
ダブルローンを抱えていると、資金計画が複雑になります。返済シミュレーションを改めて見直し、余裕があるうちに繰上返済や臨時の自己資金投入などのオプションを検討します。また、控除や税制優遇の適用条件を確認するのも忘れずに。不測の事態に備え、貯蓄や資金調達方法についても専門家と相談しておくと安心です。
専門家に相談するメリット
不動産仲介会社では、地元の価格相場や契約ノウハウを踏まえたアドバイスが得られます。必要があればリフォーム業者やホームステージングの提案を紹介してくれることもあります。住宅ローンの専門家やFP(ファイナンシャルプランナー)は、効率的な返済計画や節税対策の提案を行ってくれます。
プロの目線で問題点を洗い出し、対策も提示してもらえるため、悩まずにまずは相談する価値があります。
まとめ
ダブルローンを利用してマンションの住み替えを進める場合、事前にメリット・デメリットを正しく理解し、十分な準備が必要です。新居の購入が先行できるメリットは大きいですが、旧居が売れるまで二重返済が続く点には慎重な計画が求められます。金利上昇や市場動向を踏まえた上で、売り出し価格の調整や販売戦略の再考、場合によっては別の資金計画(住み替えローンや賃貸活用)も検討しましょう。
専任する不動産会社や金融機関、税務の専門家などとも密に連携し、自分に合った解決策を模索することが成功の鍵です。マンション売却は一生に一度あるかないかの大きなイベントですので、焦らず着実に進め、安心して住み替えを実現してください。