中古物件を探していると、居住中のまま売りに出されている物件を目にして驚く方もいるでしょう。しかし2025年現在では、居住中の中古物件は珍しくありません。建築費や住宅ローン金利の高止まりで新築購入が難しくなる中、売主が住みながら物件を売り出すケースが増えています。
本記事では、その背景・理由や、買い手にとってのメリット・注意点をわかりやすく解説します。
中古物件が居住中でも人気の理由
居住中の中古物件が増えているのにはいくつかの原因があります。まず、都市部や人気エリアでは新築供給が限られており、立地の良い中古物件に需要が集中します。また、物件価格が新築より手頃な場合も多く、コストパフォーマンスを重視する購入者に支持されています。
また、住みながら売却することで売主は資金計画を立てやすくなるという事情もあります。入居中のまま売却すれば住宅ローンの二重払いを避けられ、売却代金で次の住まいの資金を確保できます。こうした点が、買い手にとって安心材料となることもあり、居住中物件の人気につながっています。
利便性の高い立地と手頃な価格
都心部や駅近など利便性が高い地域の物件は、新築に比べて割安になることが多く、中古物件の強みとなります。特にファミリー層など住宅ローンを抱えながら住み替えをする場合、価格面で余裕が生まれる点は大きな魅力です。
このように、立地条件が良い中古物件は高い需要を集めやすく、「居住中」であっても売れ行きが安定する傾向があります。
リアルな生活感と安心感の利点
居住中の物件では、内覧時に家具やインテリアから実際の暮らしぶりが伝わってきます。生活感のある部屋を見れば、よく使われている設備やおおよその日常の雰囲気が把握できます。
また、売主や居住者に直接質問できるため、建物の経年状況や近隣環境などを詳しく聞けることも安心ポイントです。こうしたリアルな情報が得られる点が、居住中物件の買いやすさにつながります。
売却先行で資金計画が立てやすい
売主が新居購入の前に現住居を売る「売却先行」の手法を取る場合、物件に住みながら売却活動を進めることがあります。これにより、住宅ローンの二重払いリスクを減らせるため、資金面での不安が軽減されます。
売却代金でローン残債を返済できれば、買い手は売主が安心して売却する姿勢と解釈できるため、信頼感が増します。結果、居住中物件であっても取引が円滑に進みやすいのです。
中古物件が居住中のまま売りに出される主なケース
居住中のまま中古物件が市場に出る背景には、さまざまな事情があります。
売却先行型の住み替え
現在の住宅ローンを抱えたまま新しい住宅への住み替えを考える場合、「売り先行」で進めることがあります。まず今の家を売却し、その後新居を探す流れです。この場合、売主は売却期間中も自宅に居住しながら売却活動を行います。
売り先行にすることで、売却代金でローンを完済してから次の住宅資金に充てられるため、資金計画が立てやすいというメリットがあります。
転勤などの先行売却
転勤・異動や転職、子どもの進学などですぐに引越しが必要になる際も、先に自宅を売り出すケースがあります。新しい居住地への引越し準備と並行して売却活動をすることで、退職や移住後にバタバタしないようにするためです。
このような売主は、引越し時期にあわせて段階的に片付けを進めながら内覧に対応することが多く、結果的に居住中のまま売りに出されることになります。
ローン返済で任意売却
住宅ローンの返済が難しくなり、競売を避けるために「任意売却」で自宅を売りに出す場合、引越し資金がすぐに用意できないことがよくあります。こうした状況では、売却活動中も住み続けて少しでも多くの売却益を得ようとするケースがあります。
この場合は、ライフラインのチェックや所有者の居住に配慮した条件設定が重要となります。
注文住宅建築中の先行販売
注文住宅を新しく建てて住み替える予定のある人は、新居完成前に現在の家を売り出すことがあります。新築着工から完成までには数ヶ月かかるため、その間に売却先行で手持ち物件を市場に出しておきます。
このケースでは、売主が建築資金やローン返済に充てるために、居住中でも早めに売却活動を始めることが多いです。
賃貸中の投資用物件
不動産投資用の物件を売却する際、賃借人が住んでいるまま売りに出されるケースがあります。投資家は家賃収入を得ながら物件価値を下げないようにしたいので、入居者が退去するまで居住中の状態で運用し、売却が成立するまでそのままにする場合が多いです。
この場合、購入後にすぐ自分が入居するか、引渡し後に退去交渉をするかは契約次第です。購入前に賃借人の退去予定を不動産会社などで確認しておくと安心です。
空き家と居住中中古物件、どちらを選ぶべき?
中古物件の購入にあたっては、空き家と居住中物件それぞれにメリットとデメリットがあります。
空き家購入のメリット・デメリット
空き家の場合、家具や荷物がないため物件の隅々までじっくり点検できるのが大きなメリットです。売主や居住者への遠慮がない分、時間を気にせず内覧しやすいという利点もあります。
しかし、ライフライン(水道・電気・ガス)が止められていると設備状態の確認が難しく、見えない場所に隠れたキズや汚れがあるかもしれません。また、空き家は入居前にクリーニングやリフォームが必要になる場合が多い点にも注意が必要です。
居住中物件購入のメリット・デメリット
居住中物件のメリットは、ライフラインが実際に使える状態なので設備の動作確認ができることや、売主に直接質問して住環境への理解を深められる点です。実際に暮らしているので建物の使い方や近隣環境の情報を得やすいのも強みです。
一方で、家具や荷物で隠れて内覧できない箇所があるのがデメリットです。また、売主(または賃借人)の都合で内覧時間が制限されることが多く、ゆっくり見学しづらい点もあります。特に見えない部分は入居前に確認しておくよう注意しましょう。
空き家と居住中物件の特徴を比較すると、次のような違いがあります。
空き家の特徴 | 居住中物件の特徴 |
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居住中中古物件を購入する際の注意点
居住中物件を買う際は、購入後のトラブルを防ぐために次のポイントに注意しましょう。
見えない部分までしっかりチェック
内覧時は、家具や生活用品で隠れた部分を重点的に確認します。特に浴室やキッチンなど水回りの設備や、壁・床・窓枠まわりは念入りにチェックしましょう。
収納スペースや家電の裏など見えにくい箇所は、専門家(ホームインスペクション)に依頼して検査してもらうのも有効です。
ライフライン確認と費用見込み
水道・電気・ガスが使えるか内覧時に確認し、設備に問題がないかチェックしましょう。給排水管の漏水や電気設備の不具合は見逃さないようにします。
また、入居にあたってクリーニングやリフォームが必要な範囲と費用をあらかじめ見積もっておき、その分を価格交渉の材料にすることをおすすめします。
引渡し時期と契約条件の確認
引渡し時期は、いつから物件に入居できるか直結する重要な要素です。売主の引越し時期やローン返済手続きの進み具合などによって、引渡しが遅れる可能性があります。
契約前に引渡しの概ねの時期を確認し、万が一延期になった場合の対処法やスケジュール調整について話し合っておくと安心です。
ホームインスペクションの活用
居住中のままでは床下や天井裏など、目視できない箇所が多くあります。可能であればプロによるホームインスペクション(住宅診断)を利用しましょう。
専門家が住宅の隠れた欠陥や劣化箇所を事前に洗い出してくれるため、安心して購入判断ができます。
賃借人への対応確認
賃貸中の物件を購入する場合は、賃借人の退去状況を確認しましょう。引渡し後も居住を続けるのか、契約解除で退去するのかによって購入条件が変わることがあります。
また売主居住中の物件では、内覧時に荷物をどれだけ片付けてもらえるか事前に交渉しておくと、見学時の負担が減らせます。
まとめ
居住中の中古物件が多いのは、新築価格高騰や住み替えニーズの変化などが影響しており、売り手・買い手双方にメリットがあるためです。売主は資金計画をスムーズにするため住みながら売却することが多く、買主は立地や価格面で得をしやすい状況と言えます。
ただし内覧や引渡しの際には注意も必要です。居住中物件は家具で見えない箇所やスケジュール調整が課題になるため、契約前によく確認し、必要なら専門家のサポートを活用しましょう。市場の特性を理解して物件探しを進めることで、より納得のいく中古住宅購入につながります。