不動産を売却する際、「反復継続」という言葉を耳にすることがあります。この言葉は、繰り返し同じような取引を継続的に行うことを指し、通常の一度きりの取引とは異なる概念です。
特に宅地建物取引業法(宅建業法)では、不特定多数の相手に反復継続的に取引を行おうとする場合、免許の取得が必要とされます。
知らずのうちにこの条件に当てはまるケースもあり、無免許で取引を行うと法的トラブルのリスクが出てきます。
本記事では、「反復継続」の基本的な意味から宅建業法での位置づけ、具体例、違法と見なされないケース、発覚した場合のリスク、回避策まで詳しく解説します。
目次
反復継続とは?その意味と基本的な概念
「反復継続」は「反復(何度も繰り返すこと)」と「継続(途切れず続けること)」を組み合わせた言葉で、同じような取引を繰り返し続けることを意味します。
例えば、日常の場面では「雨が降っている(反復)」と「日が照っている(継続)」のように、動詞の「~ている」形でも使われます。不動産取引においては、1回だけの売買ではなく、同一人物や不特定多数に対して複数回にわたり同様の売却行為を繰り返す状態を指します。
このような反復継続的な取引は、事業性が高いと判断されるため、宅建業法上では“宅建業”に該当する可能性があります。
つまり、反復継続性のある売却行為は、ライセンスを持つ不動産事業者だけが行える「業」と見なされるのです。
言葉の意味と背景
反復継続という言葉は一般的な国語辞典には載っていないこともあり、馴染みのない方も多いでしょう。字面から理解すると、「反復」は同じ行為をくり返すこと、「継続」は途切れず続けることを表します。
つまり「反復継続」とは、同一の取引を度々、途切れずに行っている状態です。不動産売買の現場では、この概念が重要です。同じ売買が何度も繰り返される場合、単発の取引とは異なり事業的な性質を帯びるからです。
宅建業法における定義
宅建業法では、宅地や建物の取引を「業として行う」行為を宅建業と定義しています。この「業」とみなされるためには、取引を反復継続的に行い、かつ相手が不特定多数であることが要件となります。
例えば親族や知人だけを相手に一度だけ売却する場合は「不特定多数」には該当せず、また取引を繰り返し行う状態がなければ「反復継続」にはあたりません。ところが広範囲の人を相手に複数回売買を行う場合、反復継続要件を満たした「業」とされ、宅建業の免許が必要になります。
宅地建物取引業法における反復継続
宅建業法の目的は、許可を得ていない者の無許可営業を防ぐことです。法律で定める宅建業とは、宅地・建物の売買や媒介を「業として行う」ことを指し、その基準として5つの要因が挙げられています。
その中の一つが「取引の反復継続性」です。「反復継続的」に取引を行おうとするものは事業性が高いとし、「1回限りの取引」は事業性が低いと判断されます。この判断には、過去の行為や将来の予定も含めて総合的に評価されます。
さらに解釈指針では、たとえ1回の売却であっても、土地を区画分割して複数の者に対して行う場合には反復継続的な取引に該当すると明記されています。
つまり、一括で複数人に売却するとそれぞれ契約を締結することになり、結果として「反復継続」に当たるとされるのです。
事業性判断の要件
宅建業法で定義される「業」を判断する要件には、「取引の対象者」や「目的」「態様」などがあります。その中で反復継続性は、取引回数の多さや継続性で事業性を判断する要素です。例えば、一般消費者向けに繰り返し物件を販売する行為は「事業性が高い」とみなされます。
一方で、特定の知人間で単発的に売却する行為は事業性が低いと判断されます。これらの要素を総合的に勘案し、行政庁が最終的に「業」に該当するか判断します。
不特定多数との関係
反復継続性が問題となるのは、取引相手が不特定多数である場合です。例えば広い土地を自宅の売却先のみに売るケースでは相手が特定できており、事業性は低いとみなされます。
逆に同じ土地でも、複数の見込み客に同時に販売する場合は対象者が不特定多数となり、事業性が高く評価されます。つまり反復継続性は、「何を、誰に、どれだけ繰り返すか」によって判断される要素であることを押さえておきましょう。
反復継続と判断される取引例
- 広大な土地を複数の区画に分割し、複数人に売却する
- 1棟のマンションを各部屋ごとに分譲してそれぞれ売却する
- 複数の物件を短期間に購入して転売する(不動産投資・転売)
- 一般への広告やネット掲載で繰り返し購入希望者を募集し販売する
上記のように、一回の売却であっても複数の相手に対して行う場合や、短期間に次々と売買を行う場合は反復継続とみなされる可能性が高まります。
たとえ利益を目的としない相続不動産の処分でも、複数人へ分けて売却すれば反復継続と判断されるケースがあります。
最終的には行政が総合的に判断しますが、あらゆる事例での「目安となる取引回数」は法律上示されていません。
反復継続とみなされないケース
取引例 | 反復・継続性 | 免許の要否 |
---|---|---|
親族や知人1人に一度だけ戸建てを売却する | なし (単発の売却) |
不要 |
居住用住宅を生活資金のために売る | なし (営利目的ではない) |
不要 |
単一物件を1回だけ第三者に売却する | なし (反復継続性なし) |
不要 |
上記以外にも、所有している農地や駐車場を1回で売却するような個別ケースは、反復継続性がないとみなされます。
個人的な事情(転勤や住宅購入のためのマイホーム売却、相続不動産の処分など)が理由で、一度だけ売却を行う場合は法律上の「業」には当たりません。
いずれも営利目的ではなく、単発の取引であれば宅建業法の適用対象とはならない点を押さえておきましょう。
反復継続が認められた場合のリスク
- 無免許営業の罰則(宅建業法違反):3年以下の懲役または300万円以下の罰金
- 行政処分:警告や業務停止命令、悪質だと事業撤退命令が科される場合も
- 取引信用の失墜:今後の不動産売買活動や資産運用への重大な影響
繰り返しになりますが、宅建業法では「許可を受けていない者の業」となる取引は違法とされています。反復継続的な取引を無免許で行えば、刑罰を伴う無免許営業罪に問われます。実際に警察から検挙され、罰金刑や懲役刑の判決を受けるケースも報告されています。
また、不動産会社が無免許取引に加担すると営業停止などの処分対象になります。「知らなかった」では済まず、他の免許制事業と同等の厳しい罰則が科される点に十分注意してください。
反復継続に注意するポイントと対策
- 宅建業者に売却を依頼する:一括買取や仲介を利用し、自身は1回だけの取引に
- 広い土地は分筆売却を避ける:購入者が複数になると反復継続と判断されやすい
- 短期間での転売を控える:度重なる売買は事業性が高いと見なされる
- 所有期間を設ける:購入者に資産用だったと示せる期間を確保
- 複数物件なら分けて検討:同時売却よりも時期をずらすなど計画的に
反復継続に問われないためには、基本的に「1回限りの取引」として進めることが安全です。例えば広い土地の売却では、不動産会社への買取依頼を検討するとよいでしょう。買い取ってもらえば単一取引で完結しますし、一般消費者向けの広告など複数者への売却も避けられます。
また、短期の転売目的で何度も売買を繰り返す行為は反復継続とみなされやすいので注意しましょう。必要なら専門家に相談し、売却戦略や書類で購入・売却の経緯を明確にしておくことも対策になります。
まとめ
「反復継続」とは、同じような不動産取引を繰り返し継続的に行うことであり、宅建業法ではこの状態が「業」と認められます。1回限りの売却や自身の居住用不動産の処分は反復継続にあたらず免許不要ですが、複数回の売買や複数者への同時販売は業に該当する可能性が高くなります。
反復継続取引を無免許で行うと重い罰則や行政処分の対象となるため、不動産売却時には必ず注意が必要です。売却を検討する際は専門家のアドバイスを受け、安全な取引方法を選択してください。