最近、マンションや土地を繰り返し売買するときに「反復継続」という言葉が注目されています。反復継続とは、不動産取引を繰り返し行うことを指し、宅地建物取引業法上は“営業”行為とみなされる可能性があります。免許がない状態で反復継続に該当する売買をすると、3年以下の懲役または300万円以下の罰金といった厳しい罰則が科される恐れがあります。
本記事では2025年の最新情報を踏まえ、反復継続の定義や典型的ケース、判断基準、違反時の罰則・税務リスク、そして安全に取引を進めるための対策まで詳しく解説します。これらのルールを理解し、安心して不動産売買を行うためのポイントを押さえましょう。
目次
不動産売買における反復継続とは何か
不動産売買における「反復継続」とは、一般的に不動産を繰り返し売買する行為を指します。宅地建物取引業法では、免許を取得せずに継続的に不動産取引を行うことを禁止しており、反復継続的な売買は「宅建業」に該当するとみなされる可能性があります。
つまり、単に自分が住む予定の家を一度だけ売る場合などは問題ありませんが、短期間に何度も物件を売買する、あるいは転売目的で買い取る場合などは「業」とみなされ、免許が必要です。
反復継続が問題となる背景には、消費者保護の観点があります。宅建業法は不動産取引の安全と公平を守るために免許制度を設けており、無免許で反復継続の売買を行うと適正な取引保証や説明義務が果たせず、取引相手の利益を損なうおそれがあるためです。
反復継続の定義と基本概念
法律上、反復継続に厳密な取引回数や期間の定義はありませんが、一般的に以下のような特徴を持つ取引が該当します。
- 複数回の売買を行っている
- 売買によって利益を得ようとしている
- 短期間にできるだけ多くの取引を行っている
- 継続的に不動産の売買をする意思や計画がある
これらの要素が複数当てはまる場合、反復継続と判断されやすくなります。また、国土交通省の解釈でも「複数の対象者に不動産を売却する行為」は反復継続とみなす、と明記されています。
反復継続が問題視される背景
反復継続が問題とされるのは、免許を取得せずに不動産業を営むと法律違反になるからです。宅建業法では「業」として営む場合に免許を必須としており、それには単に回数だけでなく利益目的や取引態様なども考慮されます。たとえば、数回以上の売買を続けていると、取引相手からは一般の消費者への販売と見なされ「業」になる可能性が高まります。
不動産取引には多額の資金が動くため、免許を持つ法人・個人であれば厳しい管理や説明義務がありますが、無免許者だとトラブル時の責任追及が難しくなります。反復継続を禁止することで、取引の透明性と安全が確保されるのです。
宅地建物取引業法における免許要件
宅地建物取引業法により、不動産の売買を《反復継続して営む行為》には免許が必要と定められています。具体的には不動産の売買・交換・賃借等を業として行う場合、都道府県知事の免許を受ける必要があります(宅建業法第3条)。反復継続的に不動産を売買する行為は「業」を営む行為と見なされるため、個人であっても免許が必要になるのです。逆に、自分の居住用住宅や相続財産を1回のみ売却する場合は「1回限りの取引」とされ事業性が低いと判断されます。
反復継続とみなされる代表的なケース
実際にどのようなケースで反復継続と判断されやすいのか、具体例を見ていきましょう。
短期間に複数回の売買を行うケース
短期間に何度も不動産を購入・売却するケースは、反復継続とみなされる可能性が高いです。例えば、1~2年でマンションを何度も売買したり、売却後すぐに再度別の物件を購入して売却するような行為です。不動産の売却だけでなく購入回数もカウントされるため、売って買って売るという「出口戦略」を繰り返すと、累計で反復取引と判断される恐れがあります。
国土交通省のガイドラインでは、過去・現在・将来の取引状況を総合的に判断するとされており、短期的に数回以上の取引があれば事業性が高いと見なされます。
土地を開発・分割して売却するケース
広大な土地を複数の区画に分けて売却する行為は、まさに反復継続に該当します。一度に複数人に対して異なる区画を販売する場合は、法律上「1回の売却」ではなく「複数の取引」にあたると判断されます。例えば広い山林や農地を2区画や3区画に分筆し、複数の買主に売った場合や、1棟のアパートを部屋ごとに複数人に売却する場合などです。
これらは複数の取引相手への販売行為であるため反復継続とみなされ、宅建業の免許なしには行えない行為となります。
転売目的で不動産を購入するケース
利益を目的に不動産を購入し、すぐ再販売する行為も反復継続と判断されやすい典型例です。競売物件を安く仕入れ、高値で売却するような営利目的の取引は、取引の取得経緯からも事業性が高いとみなされます。実際、免許のない者が競売で多数の物件を落札し転売益を得た事例で摘発されています。
このような転売行為は、反復継続性だけでなく「物件取得の目的」や「売却の態様」からも宅建業に該当すると判断される可能性が高くなります。
自ら購入者を募って売却するケース
自分でチラシやインターネット広告を出して買主を探し、不動産を販売する行為も事業性が高いとされます。国交省のガイドラインでは「自ら購入者を募り一般消費者に直接販売しようとするものは事業性が高い」とされており、新聞広告で客を集めて売却を行い摘発された例もあります。
自己販売の場合、単に所有物を処分するのではなく「一般消費者相手に売る」という営業活動とみなされるため、反復継続として扱われる恐れがあるのです。
反復継続を判断する基準と法律上の位置付け
反復継続に該当するかどうかは、宅建業法で定める免許要件に照らして総合的に判断されます。ここでは主な判断基準と法律上の位置付けを詳しく見ていきましょう。
宅建業免許制度と営業行為の定義
宅地建物取引業を営むには免許が必要です(宅建業法第3条)。営業にあたるかどうかは、国交省の「宅建業法の解釈・運用の考え方」によって、複数の要素を考慮し総合判断されます。主な判断要素には「取引の対象者」「取引の目的」「取得経緯」「取引態様」「取引の反復継続性」の5つがあり、これらを合わせて事業性の有無を見極めます。その中でも、反復継続性があるかどうかは客観的に判断しやすい要素とされており、反復継続的売買であれば無免許営業に該当する可能性が高まります。
例えば、単発の売却かどうかが焦点となります。自宅や相続した住宅を一度だけ売る場合は事業性が低いと考えられ免許不要ですが、先に挙げた複数回の売買や区画分け販売、転売目的の取引などは「反復継続的な取引」と見なされ、免許が必要な業として扱われます。
取引頻度や規模での判断要素
取引回数や期間の明確な基準は法律上ありませんが、一般には以下のように判断されます。
取引形態 | 免許要否 | 備考 |
---|---|---|
個人所有の不動産を1回だけ売却 | 不要 | 単発取引として事業性は低い |
短期間に複数回売買を繰り返す | 必要 | 継続的取引とみなされる可能性大 |
土地を分割して複数人に売却 | 必要 | 一度に複数人相手になるため反復継続と判断 |
取引回数が2回以上になると、行政実務上反復継続と判断されやすいとされていますが、明確な回数基準は示されていません。分割売却は短時間であっても複数人への販売になるため即座に反復継続と見なされる点に注意が必要です。
判例から見る判断基準
最高裁判例では、反復継続の判断基準について明確な数値は示されていませんが、「利益目的で同種の行為を反復、継続して行うこと」が事業性のポイントとされています。実務では過去・現在・将来の取引状況や態様を総合考慮し、営利性や反復性の有無を検討します。
例えば、区画分割して複数人に販売した場合は反復継続と認定される判例もあります。一般に、営利を目的として同種の取引を繰り返せば、その回数や期間にかかわらず業とみなされ、免許が必要とされる傾向にあります。
国税庁ガイドラインと税金の考え方
税法上も、反復継続的な不動産取引は「営利を目的とした継続的行為」とみなされ、個人の非事業性売買とは区別されます。国税庁の見解では、同じ反復継続の概念を用いて、「継続的・反復的に行う営利行為による所得」は事業所得や雑所得とされる場合があります。
つまり、単発の譲渡所得ではなく事業所得として扱われる可能性があるため、場合によっては消費税課税事業者になるケースも出てきます。反復継続的売買で得た利益には消費税や事業所得税が課されることもあるため、税務上の負担が大きくなる点にも留意が必要です。
反復継続に該当する行為と罰則
反復継続に該当する行為を無免許で行うと、宅建業法違反となり刑事罰や行政罰の対象となります。
無免許営業とみなされる具体的な行為例
免許を受けていない者が反復継続的に不動産売買を行う行為は全て無免許営業に該当します。具体的には、前述の短期間複数売買、土地の区画分割売却、転売目的の売買、自ら買主を募って販売する行為などが挙げられます。このような行為を行うと、宅建業法上の「業」にあたる可能性が高まります。無免許営業が認定されると、これらの取引は全て違法と見なされ、契約の無効化リスクも伴います。
刑事罰(罰金・懲役)の可能性
宅建業法第79条により、無免許で宅建業を営むと3年以下の懲役または300万円以下の罰金(あるいはその両方)が科されることがあります。実際に、反復継続行為で無免許営業と認定され逮捕・起訴された事例も報告されています。刑事罰を回避するためには、反復継続売買を行う前に免許を取得するか、そもそも該当しないよう取引方法を工夫する必要があります。
行政処分(免許取消・停止)の可能性
免許を受けている不動産業者が反復継続とみなされる行為を行った場合、行政処分の対象にもなります。例えば、虚偽や重大な事実隠蔽で免許を取得した業者が摘発されるケースでは、免許取り消しや業務停止処分などが科される可能性があります。不動産会社に依頼する場合も、裁量が厳しく適用されることがあるので注意が必要です。
税務上のリスク(所得区分と追徴課税)
税務上、反復継続的取引で得た利益が事業所得と判断されると、所得税の計算方法や控除が変わります。一般的な譲渡所得には長期保有特例等の優遇がある一方、事業所得になると青色申告控除などは得られても、所得税率は累進課税で高くなる場合があります。
また、消費税の課税事業者要件に該当する取引規模になると消費税申告も必要です。無申告や計上漏れがあれば追徴課税や延滞税の課税対象となるため、税務上のリスクも軽視できません。
反復継続を避けるための具体的な対策
反復継続が認定されないよう、以下のような対策を検討しましょう。
取引のタイミングをずらす工夫
複数の物件売却予定がある場合には、売却のタイミングをできるだけ離すことが有効です。例えば、同じ年内に2回以上の売却を避ける、売却してから数年経ってから次の物件を売るなど、一連の取引が反復していないように計画します。時期をずらすことで反復継続性が下がり、「事業としての連続性がない」と判断されやすくなります。
売買回数や期間の見直し
売却回数や期間そのものを減らす工夫も重要です。複数物件を売る際は、一度にまとめて市場に出さずに分散させる、あるいは不動産会社に仲介を依頼してエンドユーザーに遠慮なく売却してもらう方法もあります。また、住み替えなどの理由で売却する場合は「必要な手続き」であることを明確にしておくと事業性が低いと判断されやすいです。
専門家(不動産会社・税理士)に相談する
反復継続に該当しそうな場合は、早めに専門家に相談しましょう。不動産会社であれば適切な販売方法や時期のアドバイスを得られますし、税理士であれば税務上の取り扱いまで踏まえた助言を受けられます。特に多額の利益が見込まれる取引では、税務署からの指摘を事前に予防するためにも専門家の意見が重要です。
取引記録・書類をしっかり管理する
売買契約書や収支記録など、取引に関する書類は必ず保存しておきましょう。万一、行政調査や税務調査が入った場合、取引の目的や経緯を証明する資料があることで、1回限りの取引であることや営利せず個人的な資金需要であったことを説明しやすくなります。記録を整備しておくことで、反復継続性が低いことを示せれば、違法性の判断が緩和される場合があります。
まとめ
不動産売買における「反復継続」は、短期間に複数の取引を繰り返し行うことで事業性が高いと判断され、宅建業の無免許営業に該当するリスクがあります。具体的には、土地の区画分割売却や転売目的の売買、自ら積極的に買主を募るケースなどが代表例です。法律上は免許取得者のみが継続的な売買を行えますので、取引回数や売却形態に不安がある場合は、不動産会社や税理士に早めに相談することが大切です。
期限や対象者を分散し、適切な記録を残すなどの対策を心掛ければ、反復継続とみなされる可能性を低くできます。2025年現在の法令に基づき、これらのルールを理解したうえで安心・安全に不動産売買を進めましょう。